下肢切断者の感覚フィードバックによって歩行速度、代謝コスト、幻肢痛が改善
タイトル:Sensory feedback restoration in leg amputees improves walking speed, metabolic cost and phantom pain
著者:Francesco Maria Petrini, Marko Bumbasirevic, Giacomo Valle, Vladimir Ilic, Pavle Mijović, Paul Čvančara et al.
ジャーナル情報:Nature Medicine, 2019:25; 1356–1363
背景の紹介
義足や義手は技術の進歩とともに発展しています。しかし、従来の義足は、運動や地面との相互作用に関する感覚情報を膝切断者に伝えないため、高い精神的および肉体的疲労から自信と歩行速度が低下します。脳への残りの四肢からの生理学的フィードバックの欠如は、足の欠落による幻肢痛の発生にも寄与していると報告されています。
わかっていない点
しかし、神経感覚フィードバックが切断者に対してどのような利点(歩行速度や幻肢痛など)があるかは明らかではない。
この論文の目的
この研究では、神経感覚フィードバックが運動速度や幻肢痛にどのように影響するかを、脛骨神経に4つの神経内電極を埋め込んだ大腿切断患者で検証しました。
方法
・2名の大腿切断患者を対象にしました。
・切断側の脛骨神経部分に4つの神経内電極が埋め込まれました(図1)。
・歩行速度、幻肢痛、代謝消費および精神的努力を主な評価として、電極の埋め込みの1か月後から評価された。
・埋め込み後の最初の1か月の間に痛みの治療が行われました。

結果
神経感覚フィードバックなしの試験と比較して、神経感覚フィードバック中に、患者の両方で精神的および肉体的疲労が減少し、歩行速度が増加しました。さらに、神経感覚フィードバックを伴う幻肢痛の軽減を示しました。
まとめ
歩行速度に関して、先行研究ではマイクロプロセッサーで制御された義足は一般的な義足よりも約8%歩行速度が向上したと報告しています。この研究ではさらに感覚フィードバックを加える事で10%以上の歩行速度が向上したと報告しています。
幻肢痛に関しては、感覚フィードバックによって脳の有益な神経形成変化を引き起こしたことが原因であると示唆しています。感覚フィードバックによって脊髄視床路の求心性神経の抑制機能、つまりゲート理論により説明できると報告しています。
この研究は、神経内刺激により感覚フィードバックが下肢切断者に与える利点の予備的データであり、今後大規模調査を行う上で重要である。さらに、より近位のインプラント(より高い切断レベル)が同様の刺激選択性を提供できるかどうかを証明するには、さらに調査が必要です。