もうひとつの脳 ニューロンを支配する陰の主役「グリア細胞」
本日は「もうひとつの脳」という本を紹介したいと思います。
タイトル:もうひとつの脳 ニューロンを支配する陰の主役「グリア細胞」
著者:R・ダグラス・フィールズ
監訳:小西史郎 訳:小松佳代子
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脳内には1000億個もの神経細胞(ニューロン)が存在している。ニューロンは細胞核がある細胞体、他のニューロンから情報を入力する樹状突起、他のニューロンへ情報を出力する軸索に分けられる。脳内の情報伝達は、このニューロンの電気的インパルスによって伝えられていると考えられていた。このニューロンは脳内の全細胞の15%程度しかない。残りの細胞は、電気活動を行うニューロンの間を埋める梱包材にすぎないと、これまで(1990年以前)は思われてきた。その細胞こそが本書で取り上げられている細胞、「グリア細胞」である。しかし、1990年以降の研究から、このグリア細胞は細胞同士が互いに交信し、ニューロンに指令を出し、あらゆる病気に関係していることがわかってきた。本書はグリア細胞の解剖学的構造から機能、そして脳腫瘍、脳と脊髄の損傷、精神疾患、神経変性疾患、痛み、老化や母親と子供の関係までグリア細胞を中心に書かれている本であり、グリア細胞について学ぶための導入本としては非常に勉強になる本です。
ここからはグリア細胞の種類や機能について簡単にまとめたいと思います(本書には詳しくわかりやすく書いてあります)。
グリア細胞は大きく分けて4種類に分類される
・末梢神経にあるシュワン細胞
・脳や脊髄にあるオリゴデンドロサイト(希突起膠細胞)
・アストロサイト(星状膠細胞)
・ミクログリア
シュワン細胞
この細胞は末梢神経、すなわち脊髄あるいは脳へ入る時点までの神経線維を被覆しています。このシュワン細胞は脳や脊髄には存在していません。また、末梢神経でも直径の大きな軸索にのみ巻きついています。このシュワン細胞は3つに分類されることがわかっています。1つ目がミエリンを形成するシュワン細胞、2つ目がミエリンを形成しないシュワン細胞、3つ目が神経終末のみに存在するシュワン細胞です。ミエリンとは、神経細胞の軸索を取り囲んでおり、絶縁体の役割をしています。 また、シュワン細胞がない直径が小さな軸索には、ひと掴みのスパゲッティのようにケーブル状に束ねられています。これは非ミエリン形成シュワン細胞と呼ばれています。
オリゴデンドロサイト
この細胞は脳のほぼ全体に存在しており、特に白質の神経路に多いとされています。白質には多くの軸索が束になって情報を脳の遠く離れた場所まで運んでいます。
アストロサイト
この細胞は脳と脊髄の全域でみられるが、末梢神経の神経線維には存在していません。この細胞は多種多様なその種類と、軸索も樹状突起も持たない形状が特徴で、数は、ニューロンの2~10倍も多いと言われています。この細胞はニューロンを支援しており、物理的基質として構造を支えたり、ニューロンにエネルギーを供給し、老廃物を排出したり、脳の損傷に対して瘢痕を形成して対処したりしています(ここでは詳しく述べませんが、この瘢痕形成こそが、脳損傷で脳が元通りに回復しない大きな原因であると本書では述べています)。 また、このアストロサイトこそ、多くの病気に関係していると述べられています。
ミクログリア
この細胞は脳内の専任の警護部隊と呼ばれています。この細胞は脳内に存在するグリア全体の5~20%を占めており、ニューロンとミクログリアはほぼ同数です。この細胞は、多くの枝分かれした突起を持ち、単独で存在していますが、感染や傷害の危険を感知すると高い機動性を備えたアメーバ状の細胞に変貌します。樹状突起や軸索の隙間をくぐり抜けながら有害な生命体を飲み込んでしまいます。
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