医療従事者・研究者用ノート

研究の過程と理学療法の過程は同じ

僕は現在、研究者でもあり、理学療法士でもあります。 現在は研究の方がメインであるが、週に1回は理学療法士として臨床も行っています。

本日は、研究の過程と理学療法の過程は同じであるという内容です。

研究の過程

研究はまず、「なぜこのような現象が起こっているのだろう?」と疑問が生じます。 例えば、理学療法をしているとほとんどの理学療法士や理学療法士だけでなく医療者は患者さんの病態は教科書と一致しない場面に遭遇していると思います。そのとき、「なぜ教科書と違うのだろう?」と疑問に感じます。あるいは、ある病態のリハビリテーションが確立されていなかったり対処療法のみだったら、「なぜ確立されていないのだろうか?」「神経機構がまだわかってないから対処療法しかできないのか?」などいろいろな疑問が出てきます。

次にその疑問はどの程度わかっているのかを知る必要があります。恐らく、自分が疑問に思っている事は世界中の誰かは疑問に思っているので既に研究はされています。そして、先行研究を調べて、もし誰も検証していなければその疑問に対して新規性があるということになります。ただ、まったく誰も検証していないことはないので自分が思っている疑問に対して、どこまでわかっていて、どこからがわからないのかを知ることができます。そして、どのような実験をすれば、こういう結果が出てくるとある程度は予測ができるようになります。そうすることで、これから自分が行おうとしている実験がどういう結果が出てくるか予測ができるようになります。これが仮説です。

次に、自分が疑問に思っていることがどのような実験方法であれば検証できるのか先行研究の方法を参考にして考え、実験を行います。

次に、実験を行い、そのデータを解析して結果を出します。

最後に、なぜそのような結果になったのかを考察していきます。最初に考えていた仮説と結果は同じだったのか、違ったか、もし違った場合はなぜ違ったのかを考えていきます。そして、新たな疑問が生まれます。

つまり、研究は疑問→仮説→実験→結果→考察という過程になります。

理学療法の過程

臨床はまず、患者さんの訴えがあります。 例えば、肩が痛い、腰が痛い、脳梗塞で片麻痺になり、こういう動作ができないなど、例え同じ病名でも患者さんの性別や年齢、職業によって訴えはさまざまです。まず、理学療法士は患者さんの訴え、例えば、立ち上がりができないと訴えた患者さんに対して、まず、立ち上がり動作を行ってもらい、どこに問題がありそうかを分析します。

次に仮説です。例えば、立ち上がり動作であれば、骨盤の前傾が難しいのか、足関節の背屈が難しいのか、大腿四頭筋などの筋力の問題なのかなど他にも多くの要因がある中でどこに問題がありそうか仮説を立てます。

次に評価です。仮説を立てた場所、例えば、足関節の背屈に問題がありそうであれば、背屈の角度を測定し、可動域制限の有無を評価します。または、筋力に問題がありそうであれば、筋力の評価をして、一番問題がありそうな場所を見つけます。

次に治療です。評価で一番問題だった場所に対して理学療法を行います。例えば、足関節の背屈が問題だとすれば背屈の関節可動域訓練を実施します。

次に結果です。治療した場所が一番の問題点であったかを確認するために、再度動作を行ってもらい、改善の有無を確認します。今回の内容であれば、立ち上がり動作になります。

最後に、治療した場所が一番の問題点であったかを考察していきます。もし一番の問題点であれば、改善しており、次の問題点(次に治療すべき場所)がでてきます。もし一番の問題点でなければ、なぜ違ったのかを考え、動作分析からやり直します。

つまり理学療法は動作分析→仮説→評価→治療→結果(分析)→考察という過程になります。

並べてみると

研究は疑問→仮説→実験→結果→考察
理学療法は動作分析→仮説→評価→治療→結果(分析)→考察

一見、違うように見えますが、どちらも疑問→仮説→検証→結果→考察の過程になり、研究も理学療法も同じ過程であると考えています。

そのため、臨床ができる人は研究もできると僕は考えています。個人的な意見ですが、僕の今まで出会ってきた方々で臨床ができる方は業務後に研究も行っていて両立させていましたし、逆に研究なんてどうでもいいと考えている方は臨床でも患者さんを満足させられていないと感じていました。その人の立場や環境などで臨床だけで精一杯という方もいると思いますし、研究できなければ臨床もできないということではなく、研究と臨床を両立させることで相乗効果はあると僕は感じています。

投稿者

kengo.brain.science@gmail.com

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