一般向けノート

看板・張り紙vs物理的環境

ファストフード店の長時間利用者に向けた対策や電車でのマナー違反者に向けた対策などさまざまな対策を日常生活で見かけます。 本日は、私たちが日常生活で見かけたり、何気なく使用しているものにはすべて意味があるというお話です。

商店街や電車、公共のトイレなど「マナーを守ってほしい」といったメッセージを看板や張り紙で伝えても、なかなか解決できないというのが問題です。例えば、電車でマナーの悪い座り方をしているなどが挙げられます。しかし、これらのマナーの悪い座り方は、椅子やベンチなどの物理的な環境を変えるだけで、利用者の振る舞いを改善させることが可能のようです。

では、看板・張り紙と物理的環境では何が一番違うのか?

それは、

利用者の意識的な努力を必要とするかしないかの違いです。

看板や張り紙では利用者の努力を必要とします。

どのようなプロセスかというと、まずは看板や張り紙を見て知覚する必要があります。 次にその内容を理解する必要があります。次にその内容に従うか従わないかを判断する必要があります。そして最後に従うか従わないかの行動をする必要があります。

感覚・知覚→理解→判断→行動

これらを完遂していく認知的な労力は負担になり、意識的な努力を求めることには限界があります。

物理的環境は利用者の努力を必要としない。

例えば、私たちが椅子に座るときは座るということに対してなんの努力もしていません。座ったあとは身体の心地よさに従ってほとんど無意識的に姿勢を調整しています。もし、その椅子がなんらかの座り方を誘発するように設計されていたら、その座り方を無意識的に行う事になります。そして、その椅子がふかふかで座り心地が良い設計になっていれば利用者は長時間そこに滞在し、逆に木で作られた硬い椅子であれば利用者は短時間の滞在になるでしょう。この物理的環境のプロセスは椅子に座ったときの感覚や知覚から次は行動ということになります。つまり、張り紙などから受け取るメッセージを理解して、自分がどうするか判断するというプロセスをスキップすることができます。

このように、私たちが普段、使用している電車の椅子は姿勢が良くなるように設計されており、ファストフード店やラーメン屋の椅子は回転率が良くなるように少し座り心地が悪く設計されており、逆にカフェなどの椅子は座り心地が良いように設計されています。

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kengo.brain.science@gmail.com

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