
後部頭頂葉 (Posterior Parietal Cortex: PPC)の機能
本日は後部頭頂葉 (Posterior Parietal Cortex: PPC)の機能についての論文を紹介します。この後部頭頂葉は注意、知覚的意思決定、感覚運動変換など過去の論文でさまざまな機能があると報告されていますが、この論文ではエピソード記憶に関して書かかれており、後部頭頂葉のどの領域がどの機能に関係しているかを示した論文です。
タイトル:The contribution of the human posterior parietal cortex to episodic memory
著者:Sestieri C, Shulman G.L and Corbetta M
ジャーナル情報:Nature reviews. 2017: 18; 183-192
背景の紹介
後部頭頂葉 (Posterior Parietal Cortex: PPC)はサルの生理学的研究やヒトのイメージング研究や臨床研究で視空間や感覚運動機能があることがわかっている。また、多感覚情報の統合や興味あるものを探索したり、到達するための運動計画にも関係していることもわかっている。すなわち、後部頭頂葉は内部目標と外部情報から重要な情報に注意を向けることに重要な領域である。しかし、これらの機能以外にエピソード記憶の領域があることがイメージング研究から明らかになっている。この論文では、エピソード記憶における後部頭頂葉の役割や他の領域との関係をまとめており、さらに後部頭頂葉の領域を詳細に分けて、その機能をまとめている。
後部頭頂葉の解剖学と機能
後部頭頂葉は主に6つの領域に分けられる(図1)。
上頭頂葉小葉(SPL) |
外側頭頂間構(pIPS) |
腹側頭頂間構(vIPS) |
後部頭頂間構 (latIPS) |
角回 (AG) |
中心構回(PoCS) |

上頭頂小葉、外側頭頂間構と腹側頭頂間構は背側注意経路の一部であり、知覚注意に関係しています。https://kengo-brain-science.com/category/matome/
角回はデフォルトモードネットワークの一部である。デフォルトモードネットワークとは1)、安静にしているときに働くネット-ワークであり、角回に加えて後部帯状回や中前頭回などが関係しており現在では多くの先行研究がある。
外側頭頂間構と中心構回は前頭頭頂コントロールネットワークの一部である。前頭頭頂コントロールネットワークとは2),3)、外側頭頂間構と中心構回に加えて、下頭頂小葉と背外側前頭前野が関係しており、行動を調節する機能に重要である。
図2は知覚課題と記憶課題を行ったときの角回と上頭頂小葉の領域でBOLD活動(血中の酸素化具合に依存した信号)を調べた研究です。

角回は記憶課題でのBOLDシグナルが高く、知覚課題では低くなっています。逆に上頭頂小葉では記憶課題でのBOLDシグナルは低く、知覚課題では高くなっています。
すなわち、図1の緑色の領域は知覚や注意に関連した領域で、赤色は記憶に関連した領域であることがわかりました。また、黄色の領域はどちらの課題でも活動した領域を示しています。
これらから、後部頭頂葉では知覚・注意機能とエピソード記憶の領域は明確に分かれている(機能がオーバーラップしている領域が少ない)ことがわかりました。
上記のように知覚・注意領域と記憶領域は解剖学的に分かれていますが、機能的には図3のようにトップダウン的信号やボトムアップ的信号を相互に交換し、感覚野や運動野へもシグナルを出し、感覚情報や運動・行動を調節する役割を担っています。

参考文献
1)Fox K, Foster B.L, Kucyi A, Daitch A.L and Parvizi J. Intracranial Electrophysiology of the Human Default Network. Trends in Cognitive Sciences. 2018: 22; 307-324 |
2) Marek S. The frontoparietal network: function, electrophysiology, and importance of individual precision mapping. Dialogues Clin Neurosci. 2018: 20(2); 133–140 |
3) Kucyi A, Schrouff J, Bickel S, Foster B, ShineJ.M and Parvizi J. Intracranial Electrophysiology Reveals Reproducible Intrinsic Functional Connectivity within Human Brain Networks. The Journal of Neuroscience, 2018: 38(17); 4230–4242 |