知識まとめノート

皮質下損傷による半側空間無視

以前に、半側空間無視の神経機構というタイトルで記事を書きました。

https://kengo-brain-science.com/category/matome/

ここに記載してある神経機構は皮質のことに限定して記載しています。

しかし、皮質下である大脳基底核や視床の損傷で、予後は良好ではありますが、半側空間無視が出現すると報告されています。

本日、紹介する論文は少し古い(2002年)ですが、大脳基底核や視床のどの部分を損傷したら半側空間無視が出現するのか、なぜ出現するのかを示した論文です。

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タイトル:The subcortical anatomy of human spatial neglect: putamen, caudate nucleus and pulvinar
著者:Hans-Otto Karnath, Marc Himmelbach1 and Chris Rorden
雑誌:Brain, 2002:125;350-360

背景の紹介

半側空間無視は、皮質の損傷だけでなく皮質下の損傷でも出現します。しかし、皮質の損傷と比較すると皮質下の損傷の予後は良好であり、慢性期まで持続することは少ないと言われています。皮質下で半側空間無視が出現する部位として、大脳基底核(1977~2000年までで論文12以上)、視床(1961~2000年までで論文13以上)、また、視床の後外側または服外側視床(1977~2000年までで論文7以上)、内側視床核(1981~1995までで論文4以上)が報告されています。

しかし、大脳基底核や視床を損傷しても半側空間無視が出現しない患者も存在します。

では、大脳基底核や視床のどの部分を損傷すると半側空間無視が出現するのでしょうか?

本研究の目的

本研究は、半側空間無視に関与する皮質下の領域を特定(大脳基底核と視床に限定して)することを目的としています。

被験者

32名の急性期脳卒中患者で16名の視覚障害がない半側空間無視患者(大脳基底核損傷:9名、視床:7名)と16名の半側空間無視がない患者(大脳基底核損傷:9名、視床:7名)を対象にした。

行動評価

半側空間無視の有無は、一般的な半側空間無視の評価(Letter cancellation test, Bells test, Baking tray task, Copy test)で調べている。

結果

大脳基底核

図1のAとBは9名の半側空間無視患者と9名のコントロール患者の損傷部位を重ね合わせて示しています(紫色:n=1、赤色:n=9名)。

図1:大脳基底核の無視群とコントロール群での損傷部位の被殻

半側空間無視患者はコントロール患者よりも広範囲に病変があることを示しています。

では、損傷の部位に関わらず、病変が大きいと半側空間無視が出現するのでしょうか?

本研究では、半側空間無視の重症度(評価結果)と病変の体積との相関を調べています。

しかし、評価結果と病変の体積との間に相関関係は認められませんでした(Letter cancellation test:r=0.343, Bells test:r=0.236, Baking tray task:r=0.089, Copy test:r=0.049)。すなわち、病変の大きさだけでは無視の重症度を予測することは難しいということがわかりました。

次に、無視群の損傷部位の重なりからコントロール群の重なりを差し引いた画像が図1のCになります。結果は被殻を損傷していることで半側空間無視が起こること明らかになりました。無視群は尾状核の一部も損傷していることが明らかになりましたが、半側空間無視症状の出現にはそれほど関与していないことが明らかになりました。

視床

図2のAとBは7名の半側空間無視患者と7名のコントロール患者の損傷部位を重ね合わせて示しています(紫色:n=1、赤色:n=7名)。

図2:視床の無視群とコントロール群での損傷部位の被殻

視床に関しては、無視群はコントロール群よりも損傷範囲が広範囲に及んでいることはありませんでした。

また、半側空間無視の重症度(評価結果)と病変の体積との相関を調べた結果、Baking tray taskのみに有意な相関が認められました (r=0.775)。その他の結果は、Letter cancellation test:r=0.05, Bells test:r=0.157, Copy test:r=0.12でした。

次に、無視群の損傷部位の重なりからコントロール群の重なりを差し引いた画像が図2のCになります。結果は、視床枕と外側腹側核と外側背側核の損傷で半側空間無視が出現することがわかりました。

まとめ

大脳基底核の被殻、視床の視床枕の損傷で半側空間無視が出現することが明らかになりました。

では、なぜ皮質下の損傷で半側空間無視が出現するのでしょうか?

その理由は、大脳基底核の被殻や視床枕は腹側注意経路の一部である上側頭回と解剖学的に繋がっていることが大きな原因であると考えられています(図3)。現在は腹側注意経路が損傷することで半側空間無視が出現すると結論付けられています。そのため、被殻や視床枕が損傷することで一時的に上側頭回や腹側注意経路に影響し、半側空間無視が出現します。しかし、上側頭回や腹側注意経路自体は損傷していないため、症状は急性期(一時的)のみで予後は良好ということになります。

図3:上側頭回と皮質下の解剖学的結合

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参考文献

  • Karnath HO. New insights into the functions of the superior temporal cortex. Nature Reviews Neuroscience. 2001: 2(8): 568-576.

投稿者

tsujimoto.kengo8762@gmail.com

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