医療従事者・研究者用ノート / 一般向けノート

乳児の顔認識

乳児は5ヵ月頃から人の顔を認識できると言われています。しかし、人の顔は立体であり正面から見た顔と側面から見た顔では異なります。本日は、5-8か月の乳幼児に正面および側面の顔を見せたときに何ヵ月頃から正面の顔を認識でき、何ヵ月頃から側面の顔を認識できるかを調べた研究を紹介します。

タイトル:When do infants differentiate profile face from frontal face? A near-infrared spectroscopic study.

著者:Emi Nakato, Yumiko Otsuka, So Kanazawa, Masami K. Yamaguchi, Shoko Watanabe and Ryusuke Kakigi.

雑誌:Human Brain Mapping 2009;30:462-472.

研究の背景

以前の乳児の研究では、顔に反応する(認識する)神経機構は生後5~8か月で機能するようになり、右半球の脳にその機能があることが明らかにされています1)。また、顔でも直立した顔や逆さにした顔、物体によって顔処理の神経メカニズムは異なることがわかっています1)。さらに、顔は三次元で構成されているため、視点が変化(正面から見るのか、側面から見るのか)すると、顔に関する視覚情報が変化します。人は顔認識において2種類の情報を独立して処理していると報告されています2)。1つが目、鼻、口などの特徴情報、もう1つが3次元の形状情報です。これら2つの情報を大人は統合することができるため、どの角度から顔を見ても顔と認識することが可能です。しかし、乳児の正面と側面の顔処理はいつごろから可能なのか、乳児期の顔処理の発達は明らかではありません。

本研究の目的

乳児の正面図および側面図の顔処理と発達の変化を近赤外分光分析法(NIRS)を用いて測定した。

近赤外分光分析法(NIRS)とは

体の中は、光を透過させる性質と、光を吸収・散乱させる性質があります。この吸収・散乱の程度は光の波長と生体を構成している成分により異なります。特に血液成分のヘモグロビンによって、近赤外光が吸収されますが、そこに酸素がついていると、その吸収の度合いが変化します。NIRSは近赤外線によりその度合いを測定し、酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)、脱酸素化ヘモグロビン(deoxy-Hb)の変化量を測定でき、この2つの項目より総ヘモグロビンが計算できます。

方法

対象:健康な乳児20人。5か月児10名(男児7名、女児3名)と8か月児10名(男児5名と女児5名)。

測定: 24チャンネル(左側12チャンネル、右側12チャンネル)の近赤外分光分析法(NIRS)を用いて測定した(図1)。側頭葉の後部領域が顔の知覚に重要であることから、その部分で記録した。

図1:測定場所

刺激: 5種類の野菜と写真画像を使用した。写真画像はカラーで5名の女性の正面図と側面図で構成されていた(図2)。また、正面図と側面図が交互に提示されました。

図2:刺激

結果

5か月児は正面図のみ顔として認識している可能性があることがわかりました。一方で8か月児は正面図も側面図も顔として認識している可能性があることがわかりました(図3)。

図3:結果

図3の説明:黒いバーは正面図、白いバーは側面図

まとめ

・5か月児は正面図のみ顔として認識し、8か月児は正面図も側面図も顔として認識している可能性がある。以前の行動研究では、6か月以上の乳児が顔の角度変化を認識し、同じ人物を特定できることが明らかになっている3)

・右半球のみでヘモグロビンの濃度が変化していたことから、右半球が乳児の顔認識により関与していることが明らかになった。

参考文献

  1. Otsuka Y, Nakato E, Kanazawa S, Yamaguchi MK, Watanabe S, Kakigi R. Neural activation to upright and inverted faces in infants measured by near infrared spectroscopy. Neuro- Image. 2007;34:399–406.
  2. Valentin D, Abdi H, Edelman B. What represents a face? A computational approach for the integration of physiological and psychological data. Perception 1997;26:1271– 1288.
  3. Pascalis O, de Haan M, Nelson CA, de Schonen S. Long- term recognition memory for faces assessed by visual paired comparison in 3- and 6-month-old infants. J Exper Psychol Learn Mem Cogn 1998;24:249–260.

投稿者

tsujimoto.kengo8762@gmail.com

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

類は友を呼ぶ

2020年2月20日