一般向けノート

親の対応が子供の持続的注意に影響を与える

乳児後期の持続的注意は将来の発達を予測する因子であり、持続的注意の初期の欠如は後天性障害の診断のマーカーとなります1)

しかし、親の対応によって子供(乳児後期)の注意能力に影響を与えます。

本日紹介する論文は、子供の遊びに対して親が注意を向けるか向けないかで子供の注意能力に影響を与える論文を紹介します。

タイトル:The Social Origins of Sustained Attention in One-Year-Old Human Infants.

著者:Chen Yu, Linda B. Smith

雑誌:Current Biology. 2016;26(9):1235-1240

結論から先に述べると、親は子供の遊びに対して注意を向けている方が向けていない方に比べて子供の注意能力が向上した結果となっています。

研究の背景

注意を維持する能力は、人間の発達における主要な成果であり、認知システムに対する発達的成果であると考えられています2,3)

乳児の持続的注意はしばしば個々の乳児の体質的および個人的特性のように捉えられます4,5)

しかし、人間は社会的な動物であり、非社会的能力のように見える発達(注意能力や歩行など)は社会的集団内で進化してきたため、これらの発達は社会的経験に依存している可能性があります6)

本研究の目的は、子供の遊びの最中に親が子供に対する社会的対応の違いによって子供の注意能力に影響を与えるかを調べました。

方法

・対象は11~13ヶ月の乳児36人(男児19人)とその親でした。

・乳児と親の両方に図1のような眼球運動を測定する装置を装着しました。

・課題は、色や形の異なる3つのおもちゃ(図1)を用意し、1つのグループの親には子供に積極的におもちゃで遊ぶのを促すように指示しました(子供に注意を向ける)。もう一方のグループの親には子供の遊びを促さないように指示しました(子供に注意を向けない)。

図1

・解析は子供の視線(注意)が親の顔(図1ピンク)または3つのおもちゃ(図1赤、緑、青)の4領域に対して視線の持続時間を調べました。

・親の注意(共同注意)が乳児の視覚的注意をおもちゃに拡散するという仮説を検証するために、乳児の持続的注意(図2A)と共同注意(図2B)を測定しました。共同注意は親と乳児が同時に同じおもちゃに注意を向けた期間(時間)と定義しました。

図2

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結果

・図3は乳児の持続的注意時間(青)と共同注意時間(赤)を示しています。

図3

・図3Aは共同注意時間に入るまでの長さが持続的注意時間に影響するのかを示しています。共同注意までの時間が短くても、長くても持続的注意時間に差は認められませんでした。

・図3Bは共同注意時間の長さが持続的注意時間に影響を与えるかを示しています。共同注意時間が長ければ、持続的注意時間も長いことがわかりました。

・図3Cは共同注意時間がその後の持続的注意時間に影響するのかを示しています。共同注意時間が長ければ、その後の持続的注意時間が長いことがわかりました。

まとめ

・おもちゃに対する乳児の注意の持続時間は、親の視覚的注意とそのおもちゃへの関心によって長くなり、この社会的に共有された注意は、共同注意が多ければその後の乳児自身の注意時間を長くすることを示しています。

・子供の成長は環境(親の影響)によっても大きく影響します。持続的注意時間は日々の影響により構成されます。親と子供との日々のやり取りは、時間経過とともに注意力の自己調節に関する内部ネットワークを強化させる可能性があり、持続的な共同注意は乳児の注意システムの経験に役立ち、将来自分自身が集中するため(勉強や仕事など)の手段を発見するのに役立つことが考えられます。

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参考文献

  1. Barkley, R.A. (1997). Behavioral inhibition, sustained attention, and exec- utive functions: constructing a unifying theory of ADHD. Psychol. Bull. 121, 65–94.
  2. Ruff, H.A., and Capozzoli, M.C. (2003). Development of attention and distractibility in the first 4 years of life. Dev. Psychol. 39, 877–890.
  3. Wass, S., Porayska-Pomsta, K., and Johnson, M.H. (2011). Training atten- tional control in infancy. Curr. Biol. 21, 1543–1547.
  4. Barkley, R.A. (1997). Behavioral inhibition, sustained attention, and exec- utive functions: constructing a unifying theory of ADHD. Psychol. Bull. 121, 65–94.
  5. Rothbart, M.K., Derryberry, D., and Hershey, K. (2000). Stability of temper- ament in childhood: Laboratory infant assessment to parent report at seven years. In Temperament and Personality Development across the Life Span, V.J. Molfese, D.L. Molfese, and R.R. McCrae, eds. (Psychology Press), pp. 85–119.
  6. Kuhl, P.K. (2007). Is speech learning ‘gated’ by the social brain? Dev. Sci. 10, 110–120.

投稿者

kengo.brain.science@gmail.com

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