医療従事者・研究者用ノート

腹内側前頭前皮質とストレス

腹内側前頭前皮質(vmPFC)は、多様な脳システムからの感覚的、情動的、記憶関連、および社会的情報を統合して、ストレスが多いと評価される状況的要求に従って行動および末梢の生理学的応答を調整するといったさまざまな機能があります。

今回は、腹内側前頭前皮質のストレスに対する他の領域やネットワークとの接続性について調べた論文を紹介します。

タイトル:Ventromedial prefrontal cortex connectivity during and after psychological stress in women.

著者:Ginty AT, Kraynak TE, Kuan DC, Gianaros PJ

雑誌:Psychophysiology. 2019; 56(11): 1-15.

研究の背景

腹内側前頭前野(vmPFC)は、特に自律神経系と心血管系を含む生理学的制御に関連していると多くの報告があります1,2,3)。また、腹内側前頭前野はストレスの評価に関連していることも報告されています4)

この腹内側前頭前野はさまざまな脳領域からの感覚的、情動的、記憶関連および社会的情報を統合して、それらの要求に従って行動および抹消の生理学的応答を調節する「ハブ脳システム」として機能する可能性があることが提唱されています5)

しかし、ストレス体験中に腹内側前頭前野の機能は完全に理解されておらず、他の領域との関連も理解されていません。

そのため、本研究の目的は、ストレス体験中とその回復を腹内側前頭前野と他の領域の機能的結合および心拍数などの生理学的評価との相関を明らかにすることです。

方法

・被験者は40名の女子大学生でした。

・実験は、構造画像のMRI撮像→安静時MRI撮像→2つの2分間のスピーチ課題→安静時MRI撮像の順で行いました。また、撮像時およびスピーチに心拍数を測定していました。

・2つのスピーチは、1つ目が万引きをしたと非難されたときに身を守るための説明、2つ目が自分自身の3つの良い部分および3つの悪い部分を話しました。また、これらはビデオを撮影し、ストレスの専門家によって評価されると被験者に伝えられました。

・被験者のストレスは0〜6段階で評価するLikert-type scaleを用いました。

・画像解析は、腹内側前頭前野とその他の領域との機能的結合を調べました。

結果

・図1はスピーチ前(ストレス中)での腹内側前頭前野と機能的結合が増加した領域(赤)と減少した領域(青)を示しています。

結果は、ストレスに関連すると言われている領域である島皮質、扁桃体、前帯状回が腹内側前頭前野と機能的結合が増加し、後帯状回と視床が腹内側前頭前野と機能的結合が減少しました。

図1

・図2はスピーチ前(ストレス中)(赤)とスピーチ後(ストレス後)(青)での腹内側前頭前野と各ネットワークとの接続性を示しています。

結果は、ストレス中では背側注意経路、腹側注意経路および前頭-頭頂ネットワークとの接続性が増加し、デフォルトモードネットワークとの接続性が減少しました。また、ストレス後では前頭-頭頂ネットワークとの接続性が増加しました。

図2

・図3aは腹内側前頭前野と腹側注意経路の接続性の強さとストレス値との相関を示しており、負の相関が認められました。

図3bは腹内側前頭前野とデフォルトモードネットワークの接続性の強さと心拍数との相関を示しており、正の相関が認められました。

図3cは腹内側前頭前野と前頭-頭頂ネットワークの接続性の強さとストレス値との相関を示しており、負の相関が認められました。

図3

まとめ

・心理的ストレスによって、腹内側前頭前野とストレスに関連する領域の機能的結合は増加し、さらに背側および腹側注意経路、前頭-頭頂ネットワークとの接続性が増加しました。

・最近の報告によると、否定的な感情が背側および腹側注意経路、前頭-頭頂ネットワークの機能的結合を増加させるとの報告があります6)。今回の腹内側前頭前野と注意経路の関係は、現在自分の置かれている状況の評価、すなわち知覚されたストレスに注意を向けることに関連している可能性あることを示唆しています。

参考文献

  1. Gianaros, P. J., & Wager, T. D. (2015). Brain‐body pathways linking psychological stress and physical health. Current Directions in Psychological Science, 24, 313–321. 
  2. Sinha, R., Lacadie, C. M., Constable, T., & Seo, D. (2016). Dynamic neural activity during stress signals resilient coping. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 113, 8837–8842. 
  3. Tobia, M. J., Hayashi, K., Ballard, G., Gotlib, I. H., & Waugh, C. E. (2017). Dynamic functional connectivity and individual differences in emotions during social stress. Human Brain Mapping, 38, 6185– 6205. 
  4. Levy, D. J., & Glimcher, P. W. (2012). The root of all value: A neural common currency for choice. Current Opinions in Neurobiology, 22, 1027–1038. 
  5. Roy, M., Shohamy, D., & Wager, T. D. (2012). Ventromedial prefron- tal‐subcortical systems and the generation of affective meaning. Trends in Cognitive Science16, 147–156. 
  6. Kragel, P. A., Kano, M., Van Oudenhove, L., Ly, H. G., Dupont, P., Rubio, A., … Wager, T. D. (2018). Generalizable representations of pain, cognitive control, and negative 

投稿者

tsujimoto.kengo8762@gmail.com

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