医療従事者・研究者用ノート

パーキンソン病のサブタイプによる機能的結合の違い

パーキンソン病にはいくつかのサブタイプが存在します。本日は、サブタイプの中でも振戦優勢型と姿勢不安定性/歩行困難型を対象にして、安静時機能的結合を調べ、安静時機能的結合と臨床症状の間の相関を調べた論文を紹介します。

タイトル:Altered putamen and cerebellum connectivity among different subtypes of Parkinson’s disease.

著者:Shen B, Pan Y, Jiang X, Wu Z, Zhu J, Dong J, et al.

雑誌:CNS Neuroscience and Therapeutics. 2020; 26(2): 207-214.

研究の背景

パーキンソン病は安静時振戦、筋固縮、無動、姿勢反射障害の4大症状とする疾患であり、世界で二番目に多い進行性神経変性疾患です。パーキンソン病は振戦優勢型(tremor-dominant (TD))と姿勢不安定性/歩行困難型(postural instability/gait difficulty (PIGD))の2つのサブタイプに分かれます。TD型はPIGD型よりも認知および運動機能が残存または機能低下の速度が遅いと報告されています1)。一方で、PIGD型は認知機能低下の速度が速く、認知症の発生率が高いと報告されています2)。しかし、これら2つの神経機構は不明です。

パーキンソン病は大脳基底核の黒質緻密部のドーパミン作動性ニューロンの喪失が一般的には知られています。また、大脳基底核は線条体-視床 (STC)回路を介して皮質機能を変調させる役割があり、これらの機能障害はパーキンソン病の無動や筋固縮につながります3)。しかし、このSTC回路モデルでは安静時振戦を説明できません。安静時振戦は小脳-視床-皮質回路(CTC)回路が関与していると報告されており4)、小脳核から入力を受けている視床Vim核(中間腹側核)を刺激することで振戦が改善するという報告があります5)。しかし、パーキンソン病の進行における大脳基底核と小脳との関係は明らかではありません。

また、被殻は大脳基底核の入力部であり、黒質からドーパミンを受け取ります。パーキンソン病のサブタイプ間に被殻のドーパミン入力に違いがあり、被殻の異常な活動は、2つのサブタイプ間(TD型とPIGD型)で臨床的に違いがあります。振戦はCTC回路と被殻の代謝異常であることが報告されています6)。さらに、2つのサブタイプ間の機能的結合には違いがあることも報告されています7)。しかし、サブタイプ別で被殻、小脳、大脳皮質間の機能的結合を調べた研究はありません。

本研究の目的は、振戦優勢型(TD型)と姿勢不安定性/歩行困難型(PIGD型)で被殻、小脳、皮質間の機能的結合を調べました。

方法

・被験者は、振戦優勢型(TD型)が16名、姿勢不安定性/歩行困難型(PIGD型)が23名、健常者が31名でした。

・臨床評価として下記を調べました。

 ・パーキンソン病統一スケール (UPDRS)

 ・ホーン・ヤールの重症度分類

 ・MMSE

 ・Montreal Cognitive Assessment (MoCA)

 ・Postural instability and gait difficulty (PIGD) score (姿勢反射障害、歩行障害のスコア) 

・MR撮像は3TのMR装置を用いて、安静時のMRIを撮像し、両側の被殻を関心領域として、他の領域との機能的結合を調べました。

・また、機能的結合の強度と臨床評価との相関を調べました。

結果

・TDグループはPIGDグループと比較して、MoCAスコアと振戦スコアおよびPIGDスコアに有意差が認められました。

・TDグループはPIGDグループと比較して、左被殻、右小脳小葉Ⅵと小脳脚Ⅰの間の機能的結合の増加を示しました。右小脳小葉Ⅵは主に運動関連皮質に関与しており、小脳脚Ⅰは認知領域に関与していました。

・TDグループでは、左被殻と右小脳小葉Ⅵ間の機能的結合の強度と振戦スコア間に正の相関を示しました。一方で、PIGDグループでは、右被殻と左感覚運動皮質間の機能的結合の強度とPIGDスコアと負の相関を示しました。また、被殻と小脳脚の機能的結合はMoCAスコアと正の相関を示しました。

まとめ

・パーキンソン病の大脳基底核-皮質回路の機能的結合の変化は、姿勢不安定性/歩行困難型の症状と関連していた。

・振戦優勢型は、運動および認知障害の速度がゆっくりであることがわかりました。この原因は、被殻と小脳間の機能的結合の増加に関連している可能性が示唆されます。

・つまり、姿勢不安定性/歩行困難型は大脳基底核-皮質回路が関連しており、振戦優勢型は大脳基底核-小脳回路が関連しているということが示唆されます。

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参考文献

  1. Magrinelli F, Picelli A, Tocco P, et al. Pathophysiology of motor dysfunction in Parkinson’s disease as the rationale for drug treatment and rehabilitation. Parkinsons Dis. 2016; 2016: 9832839.
  2. Lichter DG, Benedict RHB, Hershey LA. Importance of balance‐gait disorder as a risk factor for cognitive impairment, dementia and re‐ lated non‐motor symptoms in Parkinson’s disease. J Parkinsons Dis. 2018; 8: 539-552.
  3. Bergman H, Wichmann T, DeLong MR. Reversal of experimen‐ tal Parkinsonism by lesions of the subthalamic nucleus. Science. 1990; 249: 1436-1438.
  4. Horne MK, Butler EG. The role of the cerebello‐thalamo‐cortical pathway in skilled movement. Prog Neurogibol. 1995; 46: 199-213.
  5. Klein JC, Barbe MT, Seifried C, et al. The tremor network targeted by successful vim deep brain stimulation in humans. Neurology. 2012;78:787-795.
  6. Mure H, Hirano S, Tang CC, et al. Parkinson’s disease tremor‐related metabolic network: characterization, progression, and treatment effects. NeuroImage. 2011;54:1244-1253.
  7. Vervoort G, Alaerts K, Bengevoord A, et al. Functional connectiv‐ ity alterations in the motor and fronto‐parietal network relate to behavioral heterogeneity in Parkinson’s disease. Parkinsonism Relat Disord. 2016;24:48-55.

投稿者

tsujimoto.kengo8762@gmail.com

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