医療従事者・研究者用ノート

大脳皮質ネットワークのモジュール

ヒトの大脳皮質は45の領域と102のネットワークから構成されていることが明らかになっています。

しかし、これらの領域は別々に活動しているわけではなく大脳皮質ネットワークとして形態的に結合し、言語、運動、視覚などの異なる脳機能に対応しているモジュール(システムを構成する要素)、すなわちグループを形成しています。

本日は、少し古い論文ですが、大脳皮質においてモジュールの数を調べた論文を紹介します。

タイトル:Revealing modular architecture of human brain structural networks by using cortical thickness from MRI.

著者:Chen ZJ, He Y, Rosa-Neto P, Germann J and Evans AC.

雑誌:Crebral Cortex. 2008; 18(10): 2374-2381.

研究の背景

モジュール(システムを構成する要素)は、社会的ネットワークから生物学的ネットワークに至るまで、自然界の複雑なシステムの中で最も重要な特徴の1つであると言われている1)

ネットワーク内のモジュールを見つけだすことは、複雑なネットワークにおける解剖と機能間の関係を解明し、重要な機能に関連する部位を特定することに役立つと考えられている2)

神経科学の分野では、複雑な脳内ネットワークの形成、発達、機能について定量的な洞察が得られている3)。現在のヒトの大脳皮質ネットワークの研究は主にfMRI、脳波、脳磁図から収集した神経生理学的データを用いた機能的結合パターンの解析に焦点が当てられている。

最近の研究では、皮質の厚さ(ニューロン、グリア、神経線維の大きさ、密度)の領域間の関連性が、ヒトの脳の重要な解剖的結合情報を明らかにしていることが示唆されている4,5)。このような皮質の厚さの領域間相関は、解剖学的結合を介した神経基盤間の相互作用に起因していると考えられる。

大脳皮質のネットワークは、健常成人124名のMRIデータを用いた先行研究で構築された45の領域と102の機能的結合から構成されている4)

本研究の目的は、大脳皮質の厚さを用いて脳内ネットワークにおけるモジュールを明らかにすることとした。

方法

・被験者は右利きの124名(男性:71名、平均年齢24.38±4.25歳)を対象とした。

・MRI撮像には、Philips Gyroscan 1.5T superconducting magnet systemを用いた。

・ネットワークモジュールの尺度Q(p)は図1のように定義されます。

図1

ここでは、Nはモジュール数、Lはネットワーク内の結合数、lsはモジュールsのノード間の結合数、dsはモジュールsのノードの度数の和である。

この式を簡単に言うと、実際のモジュール内の結合数と期待される数との差を定量化するものである。

また、ノードとは、例えば、社会ネットワークにおける人間のような、システムの基本的な要素を表現している。

結果

大脳皮質ネットワークのモジュール

図2は大脳皮質ネットワークの識別されたモジュールをデンドログラムで示しています。

大脳皮質ネットワークは6つのモジュールで構成されていることがわかりました。

図2

ネットワークモジュールの機能的意義

図3は6つのモジュールの構成領域を示しています。

図3

モジュールⅠ(赤色)

領域:両側上前頭回(SFG)、中前頭回(MFG)、内側前頭回(MFG)などの前頭葉領域の9領域から構成されている。

機能:戦略的/実行機能

モジュールⅡ(オレンジ色)

領域:右中心前回(PrCG)、両側上頭頂小葉(SPL)、角回・後頭頂回(PoCG)などの運動関連領域や頭頂領域の10領域から構成されている。

機能:感覚運動および空間機能

モジュールⅢ(ピンク色)

領域:両側外側前頭回(LOFG)と両側下側頭回(ITG)の4領域から構成されている。

機能:嗅覚

モジュールⅣ(青色)

領域:両側海馬傍回(PHG)、両側楔前部(PCU)、両側内側後頭側頭回(MOTG)、左舌状回(LING)の7領域から構成されている。

機能:記憶や感情処理

モジュールⅤ(黄色)

領域:両側縁上回(SMG)、中側頭回(MTG)、上側頭回(STG)、下前頭回(IFG)、左外側後頭側頭回(LOTG)、右舌状回(LING)の10領域から構成されている。

機能:聴覚・言語

モジュールⅥ(緑色)

領域:後頭葉領域の5つの領域

機能:視覚

まとめ

・本研究では大脳皮質ネットワークのモジュールを調べた。

・大脳皮質ネットワークには実行機能、感覚・運動および空間機能、嗅覚、記憶や情動、聴覚・言語、視覚の6つの機能を担うモジュールがあることがわかった。

・これらの大脳皮質のモジュールを解析することによって正常な脳の発達や精神疾患などのさまざまな脳障害における皮質異常の理解を得られる可能性がある。

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参考文献

  1. Hartwell LH, Hopfield JJ, Leibler S, Murray AW. 1999. From molecular to modular cell biology. Nature. 402:C47-C52.
  2. Fortunato S, Barthelemy M. 2007. Resolution limit in community detection. Proc Natl Acad Sci USA. 104:36-41.
  3. Sporns O, Chialvo DR, Kaiser M, Hilgetag CC. 2004. Organization, development and function of complex brain networks. Trends Cogn Sci. 8:418-425.
  4. He Y, Chen ZJ, Evans AC. 2007. Small-world anatomical networks in the human brain revealed by cortical thickness from MRI. Cereb Cortex. 17:2407-2419.
  5. Lerch JP, Worsley K, Shaw WP, Greenstein DK, Lenroot RK, Giedd J, Evans AC. 2006. Mapping anatomical correlations across cerebral cortex (MACACC) using cortical thickness from MRI. Neuroimage. 31:993-1003.

投稿者

tsujimoto.kengo8762@gmail.com

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