医療従事者・研究者用ノート

脳震盪と同所性機能的結合

スポーツにおける脳震盪は比較的多い印象があります。先日も日本人の有名野球選手が頭部に打球が当たり、脳震盪の診断を受けたニュースがありました。

脳震盪の症状は数日から数週間で改善する人もいれば、数ヶ月持続する人もいます。

本日は、脳震盪後の患者の同所性機能的結合と症状の回復との関連を調べた論文を紹介します。

タイトル:Homotopic region connectivity during concussion recovery: A longitudinal fMRI study.

著者:Chong CD, Wang L, Wang K, Traub S and Li Jing.

雑誌:PLoS ONE. 2019; 14(10): 1-12.

研究の背景

脳震盪は身体的、認知的、感情的な後遺症を伴う疾患であり、数日から数週間で治ることが多いが、患者の中には数ヶ月以上も症状が持続することもあると報告されている1)。脳震盪をMRIやCTを用いた画像診断では、脳震盪に関連した異常を検出したり、症状の重症度を示したりすることは困難である2,3)。安静時機能的磁気共鳴画像法(resting-state fMRI)は脳震盪患者のさまざまな脳内ネットワークの機能的結合性の変化を検出する上で有用であるといくつかの論文で報告されている4,5)

脳震盪や慢性疼痛症候群などの患者では、同所性機能的結合が破綻していると報告されている6,7)。つまり、脳震盪や慢性疼痛症候群などの患者は左半球と右半球(同所性)の同じネットワーク間の機能的結合が破綻していることを意味している。

例えば、ある研究8)によると、健常者と比較して、脳震盪により1ヶ月以上症状が持続している患者では背外側前頭前野領域の機能的結合が低下していると報告されている。

しかし、脳震盪後の同所性機能的結合が症状の回復との関連は明らかでない。

本研究の目的は、脳震盪後の患者の同所性機能的結合と症状の回復との関連を調べた。

方法

・被験者は15名の脳震盪患者(男性2名、平均年齢:39.1±10.1歳)と15名の健常者(男性2名、平均年齢:39.1±11.7歳)でした。

・安静時機能的磁気共鳴画像は3Tの装置を使用した。

・脳震盪患者は脳震盪後1ヶ月(平均28日)および5ヶ月(121日)の2つの時点で撮像を行いました。

・解析は29の疼痛処理に関連する領域を対象としました(表1)。

表1

・脳震盪に関連する症状はSports Concussion Assessment Tool 3(SCAT-3)を用いました。

https://cdnlinks.lww.com/permalink/jsm/a/jsm_23_2_2013_02_14_mccroryy_200872_sdc2.pdf

結果

図1は解析に用いた29の領域を示しています。

図1

・健常者と比較して脳震盪患者では、中央帯状回(3)、後部島皮質(4)、第一次視覚野(17)、三叉神経脊髄路核(21)、中心前回(25)および視床(27)の6つの領域の同所性機能的結合が有意に低下していました。(()内の数字は図1の数字の領域を示している)

・しかし、脳震盪後5ヶ月では1ヶ月と比較して、上記の6つの領域に加えて前部島皮質(1)の同所性機能的結合は有意に増加していました。また、健常者と比較しても機能的結合の強さに有意差は認められませんでした。

・機能的結合と症状の重症度との相関は、体性感覚領域(第一次体性感覚野(7)と第二次体性感覚野(11))とSCAT-3のスコアとの間に負の相関が認められました。

まとめ

・脳震盪後の患者の同所性機能的結合と症状の回復との関連を調べた。

・健常者と比較して、脳震盪1ヶ月後は6つの領域で同所性機能的結合の低下が認められた。しかし、5ヶ月後では差は認められなかった。つまり、5ヶ月後の同所性機能的結合は回復していたことを意味している。

・脳震盪において体性感覚領域の同所性機能的結合の回復は症状の回復と関連していることが示唆された。

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参考文献

  1. Sigurdardottir S, Andelic N, Roe C, Jerstad T, Schanke AK. Post-concussion symptoms after traumatic brain injury at 3 and 12 months post-injury: a prospective study. Brain injury: [BI]. 2009; 23(6):489–97.
  2. Kurca E, Sivak S, Kucera P. Impaired cognitive functions in mild traumatic brain injury patients with nor- mal and pathologic magnetic resonance imaging. Neuroradiology. 2006; 48(9):661–9.
  3. Munivenkatappa A, Deepika A, Prathyusha V, Devi I, Shukla D. Can an abnormal CT scan be predicted from common symptoms after mild head injury in children? Journal of pediatric neurosciences. 2013; 8 (3):183–7.
  4. Mayer AR, Mannell MV, Ling J, Gasparovic C, Yeo RA. Functional connectivity in mild traumatic brain injury. Human brain mapping. 2011; 32(11):1825–35. 
  5. Johnson B, Zhang K, Gay M, Horovitz S, Hallett M, Sebastianelli W, et al. Alteration of Brain Default Network in Subacute Phase of Injury in Concussed Individuals: Resting-state fMRI study. NeuroImage. 2012; 59(1):511–8.
  6. Zhu Y, Song X, Xu M, Hu X, Li E, Liu J, et al. Impaired interhemispheric synchrony in Parkinson’s dis- ease with depression. Scientific reports. 2016; 6:27477.
  7. Tang C, Zhao Z, Chen C, Zheng X, Sun F, Zhang X, et al. Decreased Functional Connectivity of Homo- topic Brain Regions in Chronic Stroke Patients: A Resting State fMRI Study. PloS one. 2016; 11(4): e0152875.
  8. Sours C, Rosenberg J, Kane R, Roys S, Zhuo J, Shanmuganathan K, et al. Associations between inter- hemispheric functional connectivity and the Automated Neuropsychological Assessment Metrics (ANAM) in civilian mild TBI. Brain imaging and behavior. 2015; 9(2):190–203. 

投稿者

tsujimoto.kengo8762@gmail.com

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