
脳底動脈の機能の生理学
脳活動に焦点をあてたものを多くまとめてきましたが、本日は脳血管疾患を考えるにあたり、脳に分布する血管に焦点を当ててまとめます。
1997年に発表されており、脳底動脈の機能について示している論文をまとめます。
タイトル:Role of nitric oxide in the contractile response to 5-hydroxytryptamine of the basilar artery from Wistar Kyoto and stroke-prone rats
著者:Salvatore Salomone, Nicole Morel, Théophile Godfraind. Br J Pharmacol.
雑誌:Br J Pharmacol. 1997. 121(6). 1051–1058.
研究の背景
本論文は、コントロールモデル動物として、Wistar Kyoto Rats(WKY:ラット)を用いており、それに対して、高血圧を起因として脳卒中を発症するspontaneously hypertensive stroke-prone rats(SHRSP:ラット)を比較対象としている。
これらの脳底動脈は、WKYおよびSHRSPより単離されたものでは、WKYに比べてSHRSPで5-ヒドロキシトリプトファン(5-HT:セロトニン)の収縮反応性が高いことが知られている。これらの反応には一酸化窒素(Nitric Oxide(NO))が重要であることが知られており、WKYにおける内皮を除去した脳底動脈においても5-HTの収縮反応が増大することが報告されている。動脈の収縮における内皮の活性化の抑制は、正常血圧ラットでより高血圧ラットでの方が低いことが示されている。
今回の実験の目的は、WKYとSHRSPの5-HTに対する脳底動脈の反応性の相違が内皮機能障害に関連しているかどうかを検討することである。
結果
結果として、5-HT(1μM)の収縮下での副交感神経の興奮により遊離されるアセチルコリン(ACh:3μM)の弛緩反応は、WKYに比べてSHRSPにおいて減弱していた。また、内皮存在下におけるKCl(100mM)投与による収縮発生は、SHRSPの標本で減弱していた。一方で、100mM KClを100%とした際の5-HT収縮では、WKYに比べてSHRSPで増加していた。これら5-HTの収縮反応は、NO合成酵素阻害薬の存在下では、WKYの標本で増大するもSHRSPの標本では変化は認められなかった。
まとめ
これらより、SHRSP ではAChにおける血管弛緩反応は減弱または消失し、WKYでは5-HT収縮反応は内皮細胞の除去やNO合成酵素阻害薬において増強した。
一方で、SHRSPにおいては変化を認めなかったことから、内皮細胞から生成されるNO遊離が関連していることが示唆されている。
また、NO生成はL型Ca2+チャネルの開口確立を低下させ、血管トーヌスを低下させる可能性が示唆されている。
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