医療従事者・研究者用ノート

心不全治療薬のARNIについて

今回は、心不全治療薬として承認されたアンジオテンシン受容体拮抗薬ネプリルリシン阻害薬(ARNI)について簡単な説明を加えて、レビューの紹介をします。

本内容は、心不全での話題提供のみでなく、脳実質への影響も同じように考えていく必要があります。

タイトル:Pharmacogenomics of angiotensin receptor/neprilysin inhibitor and its long-term side effects

著者:Krittanawong C, Kitai T. 

雑誌:Cardiovasc Ther. 2017. 121(6). 35:e12272.

心不全症状では、心房性Na利尿ペプチド(ANP)濃度を上昇させます。このANPは主に腎臓で発現し、機能としては心保護作用があり、ネプリライシンはこのANPを分解する作用がある。

このネプリライシンの分解を阻害するのがプリルリシン阻害薬(nep inhibitor)である。

このアンジオテンシン受容体拮抗薬ネプリルリシン阻害薬(ARNI)は、心不全患者の罹患率、死亡率、再入院率を改善する可能性がある

PARADIGM-HF試験では、ejection fraction(EF)が減弱した心不全患者においてARNIが罹患率および死亡率を低下させることが示され、現在進行中のPARAMOUNT試験およびPARAGON-HF試験では、EFが温存された心不全患者でARNIが罹患率および死亡率の改善効果を有するかどうかが決定された。

しかしながら、ARNIの長期的投与による認知機能障害やアルツハイマー病については不明な点がある。

この部分が脳科学に興味がある方のポイントになるかもしれません。それは、認知症の病態ではアミロイドβ蛋白が発現しますが、これを分解するのがネプリライシンになります。したがって、nep inhibitorの長期投与による効果を検証しなければなりません。

ネプリライシンを阻害することにより、ANP濃度が上昇し、血管拡張作用やナトリウム利尿作用が発現することが知られている。

ネプリライシンはANPのみならず、脳内ナトリウム利尿ペプチド、C型ナトリウム利尿ペプチド、SP、BK、アドレノメドゥリン、CPGR、グルカゴン、バソプレシン、血管活性腸管ポリペプチド、Enk、オキシトシン、ガストリン、NK-A、エンドセリン-1、アンジオテンシンなどの他の血管活性ペプチドも加水分解する。

PARADIGM-HF試験およびPARAMOUNT試験の結果から、ARNIの投与は37ヵ月間で安全であることが示された。

PARADIGM-HF試験においても調査機関が短期間であるため、長期的な副作用の評価が行えていなかった。そのため、筆者らはARNIの薬理遺伝学的因子と潜在的な長期的な副作用を明らかにすることを試みた。

医師は、アルツハイマー病および脳アミロイド血管症の遺伝的危険因子を有する高齢患者を注意深くモニターすべきであるとしている。

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