医療従事者・研究者用ノート

大脳基底核と小脳の相互ネットワーク

大脳基底核と小脳は皮質下レベルで相互に結合していることが明らかになっています。

本日は、どのような実験によりこれら2つの領域が結合しているかを証明したサルとヒトの実験を紹介していきます。

タイトル:The basal ganglia and the cerebellum: nodes in an integrated network.

著者:Bostan AC and Strick PL.

雑誌:Nature Reviews Neuroscience. 2018; 19(6): 338-350.

大脳基底核と小脳は、独自に機能している皮質下システムであると考えられています。大脳基底核と小脳の出力は、同じ皮質領域でも異なる視床核に投射することで影響を与えます。その結果、2つのシステムは独立しており、大脳皮質のレベルでのみ情報の交換をしていると考えられてきました。

ここでは大脳基底核と小脳が皮質下レベルで相互に結合されていることを示すデータをレビューします。

解剖学的結合のデータ(サルの実験)

サルにおける狂犬病ウイルスの逆行性軸索輸送を用いた研究では、小脳の出力核である歯状核(DN)から大脳基底核の被殻への2シナプス経路が明らかになっています(図1)。

図1

具体的には、狂犬病ウイルスが被殻に注入され、被殻からの一次ニューロンは師匠の視床随板内核ニューロンに投射していた。その後、二次ニューロンは主に小脳の歯状核に投射していることが明らかとなった1)

一方で大脳基底核の視床下核(STN)から小脳皮質への2シナプス経路も明らかになっています(図2)。

図2

狂犬病ウイルスを外側小脳皮質の非運動領域に注入すると二次ニューロンは視床下核の運動領域と非運動領域に投射していることが明らかとなった2)。これらの結果から視床下核から小脳皮質への投射は小脳機能の運動と非運動の両方に影響を与えていることを示しています。

疾患における大脳基底核と小脳の相互作用:脳機能イメージング

図3はいくつかの疾患の脳画像研究から得られた知見から大脳基底核と小脳の相互作用の根拠が得られています。この図ではオレンジ色の矢印が小脳、青色の矢印が大脳基底核、白色の矢印が視床や大脳皮質を示しています。

図3

図3a:パーキンソン病は大脳基底核回路の異常な活動が小脳回路に影響して機能障害を引き起こす可能性がある主要な例です。パーキンソン病は黒質緻密部のドーパミン作動性ニューロンの変性であり、その結果、線条体の感覚運動領域からドーパミンが枯渇すると大脳基底核の活動の低下してパーキンソン病の特徴的な症状が出現します。多くの研究では、大脳基底核の活動の変化が小脳の活動に影響を及ぼしているとされています。パーキンソン病における小脳領域の過活動は他の経路からの影響も考えられますが、視床下核からの病理学的な影響を反映している可能性があるとされています。視床下核からの小脳皮質へのシナプス経路はパーキンソン病患者やモデル動物で高い視床下核の活動を引き起こし、小脳皮質の過活動を引き起こす可能性があると報告されています3,4,5,6)

図3b,c,d:トゥレット障害や強迫性障害の精神疾患じゃ、皮質-基底核回路の障害と関連しています。例えば、トゥレット障害患者におけるチックの正確な発生源は不明なままですが、線条体におけるGABA機能の低下がチックの主な原因であると考えられています7)。さらに大脳基底核の異常な活動が小脳と一次運動野の活動を変化させ、チックを発症させているという報告8)やチックの重症度が小脳活動と相関しているという報告9)があります。

小脳の活動の変化は、トゥレット障害と強迫性障害の両方の脳画像研究で明らかになっています。例えば、安静時機能的結合を用いた研究では、強迫性障害患者は健常者と比較して、小脳皮質と被殻の両方が他の領域との機能的結合性が増加していることが報告されています(図3b)10)。また、トゥレット障害患者では、線条体の活動低下と小脳の過活動が特徴であるとされています(図3c,d)11)

図3e:シストニアは大脳基底核の障害と考えられてきたが12)、最近では、小脳の異常活動が大脳基底核に影響し、機能障害を引き起こしている可能性が示唆されています。小脳-視床-皮質回路の機能的結合性の異常はジストニア患者で多く観察されると報告されています13)。また、ジストニア患者では、被殻と小脳皮質の活動が共に変化することが明らかになっています14)

まとめ

大脳基底核と小脳の相互ネットワークは過去のモデル動物やヒト(患者)のさまざまな研究から明らかになっているがこの相互ネットワークの全容と役割を明らかにするためには、さらなる研究とモデル化研究が必要である。

大脳基底核と小脳の相互ネットワークは大脳皮質と統合されたネットワークを形成するために密に相互ネットワークが形成されていることが明らかとなっている。大脳基底核-小脳-大脳皮質ネットワーク全体を考慮した研究やモデル化研究をさらに進められればさまざまな病態の理解やリハビリテーションに役立つことが考えられる。

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参考文献

  1. Hoshi E, Tremblay L, Feger J, Carras PL & Strick PL. The cerebellum communicates with the basal ganglia. Nat. Neurosci. 2005; 8: 1491–1493.
  2. Bostan AC, Dum RP & Strick PL. The basal ganglia communicate with the cerebellum. Proc. Natl Acad. Sci. 2010; 107: 8452–8456.
  3. Schrock LE, Ostrem JL, Turner RS, Shimamoto SA & Starr PA The subthalamic nucleus in primary dystonia: single-unit discharge characteristics. J. Neurophysiol. 2009; 102: 3740–3752. 
  4.  Mentis MJ et al. Early stage Parkinson’s disease patients and normal volunteers: comparative mechanisms of sequence learning. Hum. Brain Mapp. 2003; 20: 246–258.
  5. Zhang J et al. Akinetic-rigid and tremor-dominant Parkinson’s disease patients show different patterns of intrinsic brain activity. Parkinsonism Relat. Disord. 2015; 21: 23–30.
  6. Lewis MM et al. Task specific influences of Parkinson’s disease on the striato-thalamo-cortical and cerebello-thalamo-cortical motor circuitries. Neuroscience. 2007; 147: 224–235.
  7. Worbe Y, Lehericy S & Hartmann A Neuroimaging of tic genesis: Present status and future perspectives. Mov. Disord. 2015; 30: 1179–1183.
  8. Neuner I et al. Imaging the where and when of tic generation and resting state networks in adult Tourette patients. Front. Hum. Neurosci. 2014; 8: 362.
  9. Wang Z et al. The neural circuits that generate tics in Tourette’s syndrome. Am. J. Psychiatry. 2011; 168: 1326–1337.
  10. Pourfar M et al. Abnormal metabolic brain networks in Tourette syndrome. Neurology. 2011; 76: 944– 952.
  11. Feigin A et al. Thalamic metabolism and symptom onset in preclinical Huntington’s disease. Brain. 2007; 130: 2858–2867.
  12. Breakefield XO et al. The pathophysiological basis of dystonias. Nat. Rev. Neurosci. 2008; 9: 222–234.
  13. Filip P, Lungu OV & Bares M Dystonia and the cerebellum: a new field of interest in movement disorders? Clin. Neurophysiol. 2013; 124: 1269–1276.
  14. Trost M et al. Primary dystonia: is abnormal functional brain architecture linked to genotype? Ann. Neurol. 2002; 52: 853–856.

投稿者

tsujimoto.kengo8762@gmail.com

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2020年7月29日