
大脳基底核の接続性の旧モデルと新モデル
本日は論文内にある1つの図について詳しく説明していこうと思います。
本日は大脳基底核の接続性の旧モデルと新モデルです。
タイトル:Recent advances in understanding the role of the basal ganglia.
著者:Simonyan K.
雑誌:F1000Research. 2019; 8(0): 122.
上記の論文に記載されている図1の説明をしていきます。
その図がこちらになります。

大脳基底核は1980年代後半以降にヒトと動物の研究から大脳基底核の古典的なモデルは興奮性グルタミン酸作動性と抑制性GABA作動性の直接および間接経路に基づいて構築されてきました。
左の図はこれまで言われてきた接続性を示しており、大脳皮質からトップダウンで線条体に投射され、淡蒼球外節と視床下核を介して直接または間接的に淡蒼球内節と黒質網様部に収束します。
淡蒼球内節と黒質網様部からの出力は視床に送られ、視床から大脳皮質に戻り皮質-基底核-視床-皮質ループを形成します。大脳基底核の直接経路と間接経路は黒質緻密部からのドーパミン放出によって興奮性と抑制性が調節されます。
一方で、最近の研究から基底核の接続性は高密度であることが明らかになってきました(右の図)。この新モデルも最も重要な部分は、直接経路と間接経路の接続性です。
旧モデルでは、直接経路と間接経路は別の経路(接続性がなく区別されている)であると考えられてきました。
しかし、直接経路と間接経路間の接続性が明らかになりました1,2)。特に淡蒼球外節から黒質網様部への抑制性の経路により大脳基底核内の機能バランスを調整していることが明らかになっています3)。
もう1つの重要な部分はネットワーク内での視床下核の重要性です。視床下核は大脳皮質から入力を受け、淡蒼球内節と黒質網様部に直接投射しているハイパー直接経路を形成しています4,5)。視床下核は皮質領域や皮質下領域のさまざまな領域から直接投射を受ける主要な入力の中継核であると考えられています。
この知見を臨床に応用したのが脳深部刺激です。パーキンソン病患者の視床下核に対して脳深部刺激が応用されています。
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参考文献
- Wu Y, Richard S, Parent A: The organization of the striatal output system: a single cell juxtacellular labeling study in the rat. Neurosci Res. 2000; 38(1): 49–62.
- Matamales M, Bertran-Gonzalez J, Salomon L, et al.: Striatal medium-sized spiny neurons: identification by nuclear staining and study of neuronal subpopulations in BAC transgenic mice. PLoS One. 2009; 4(3): e4770.
- Cazorla M, de Carvalho FD, Chohan MO, et al.: Dopamine D2 receptors regulate the anatomical and functional balance of basal ganglia circuitry. Neuron. 2014; 81(1): 153–64.
- Nambu A, Tokuno H, Takada M: Functional significance of the cortico- subthalamo-pallidal ‘hyperdirect’ pathway. Neurosci Res. 2002; 43(2): 111–7.
- Coizet V, Graham JH, Moss J, et al.: Short-latency visual input to the subthalamic nucleus is provided by the midbrain superior colliculus. J Neurosci. 2009; 29(17): 5701–9.