医療従事者・研究者用ノート

統合失調症の認知機能

統合失調症の特徴的な症状は、幻覚や妄想などの陽性症状と意欲の低下などの陰性症状です。しかし、注意や記憶などの認知機能低下も認められると言われています。

本日は、統合失調症患者の認知機能(特に注意機能)と脳の構造的・機能的異常との関係を調べた論文を紹介します。

タイトル:Uncoupled relationship in the brain between regional homogeneity and attention function in first-episode, drug-naïve schizophrenia.

著者:Wenjun H, Zhiyong Z, Zhe S, Bin S, Shangda L, Mekbib B, et al.

雑誌:Psychiatry Research Neuroimaging. 2019; 294.

研究の背景

統合失調症は、遺伝的または環境的要因またはその両方に起因する異常な神経発達過程に起因する神経疾患であり1)、複雑な行動および認知を特徴とする疾患です2)。統合失調症は幻覚や妄想などの陽性症状と意欲の低下などの陰性症状が特徴的ですが、注意や記憶などの認知機能低下も認められます3)

例えば、早期発症の統合失調症患者は健常者と比較して、注意力、言語記憶および処理速度の認知機能テストで有意な低下を示したと報告しています3)。統合失調症の認知機能低下はさまざまな報告により明らかになっていますが、その神経機構は明らかではありません。

統合失調症患者を対象とした脳画像の先行研究では、統合失調症患者では健常者とうつ病患者と比較して、左上側頭回のReHo(※)の減少と、右上前頭回のReHoの増加が認められています4)

また、統合失調症患者は健常者と比較して、前頭葉、頭頂葉、側頭葉の灰白質体積が減少していると報告しています5)

しかし、統合失調症患者の認知機能とReHo、灰白質体積は個々の研究では明らかになっていますが、これらがどのように関係しているかは明らかになっていません。

本研究では、ReHoと灰白質体積の両方を神経心理学的評価と組み合わせて調査しました。

※ReHo(regional homogeneity):局所均一性と言って脳局所の活動(隣接したボクセル)の同期性の程度を定量的に評価する方法です。

方法

被験者

・統合失調症の診断および統計マニュアルで診断基準を満たした68人(年齢13~45歳)。

・この研究に参加した統合失調症患者は初発で薬剤は未投与でした。

・また、脳腫瘍、脳外傷、発作障害、精神遅延、構造的脳異常、妊娠中、授乳中の患者は除外された。

・統合失調症患者と同じ年齢、性別、利き手が一致した64人の健常者をコントロール群としました。

神経心理学的評価

Wisconsin card sorting test(WCST):実行機能の計測法

Continuous performance test(CPT):選択的注意、持続的注意、反応抑制の計測法

MRI撮像

・3.0Tの装置を用いて撮像しました。

・撮像はT1強調画像とresting-state fMRIを撮像し、灰白質体積とReHoを解析した。

結果

・コントロール群では、左中前頭回(MFG)、右上・下頭頂小葉(SPL/IPL)、右角回(AG)および右中・下側頭回(MTG/ITG)においてCPT(注意機能評価)中のcorrect trials1(CT1)とReHoとの間に有意な正の相関が認められたが、統合失調症群では認められなかった(図1)。

図1

・統合失調症群ではコントロール群と比較して右下頭頂小葉(IPL)と角回(AG)で灰白質体積が減少しており(図2A)、統合失調症群の右下側頭回のReHoと灰白質体積の間に有意な負の相関が認められた(図2Bの青色)。

図2

まとめ

・本研究では、ReHoと灰白質体積の両方を神経心理学的評価と組み合わせて調査した。

・統合失調症患者では、左中前頭回、右上・下頭頂小葉、右角回、右中・下側頭回においてコントロール群と違いが認められた。

・また、統合失調症患者では右下頭頂小葉と右角回の灰白質体積が減少していた。

・上記の中前頭回や下頭頂小葉、中側頭回などは注意ネットワークを構成しています。先行研究では、統合失調症患者において中前頭回を含む注意ネットワークの活性が低いことが報告されています6)。これらの結果から統合失調症患者で見られる注意機能障害は、統合失調症に関連する脳領域の構造的および機能的な異常と関連している可能性が示唆された。

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参考文献

  1. Insel, T.R., 2010. Rethinking schizophrenia. Nature 468, 187–193.
  2. Owen, M.J., Sawa, A., Mortensen, P.B., 2016. Schizophrenia. Lancet 388, 86–97.
  3. Oie, M., Sundet, K., Rund, B.R., 2010. Neurocognitive decline in early-onset schizophrenia compared with ADHD and normal controls: evidence from a 13-year follow-up study. Schizophr. Bull. 36, 557–565.
  4. Chen, J., Xu, Y., Zhang, K., Liu, Z., Xu, C., Shen, Y., Xu, Q., 2013. Comparative study of regional homogeneity in schizophrenia and major depressive disorder. Am. J. Med. Genet. B 162b, 36–43.
  5. Wang, F., Gao, B., Wang, Y., Liu, W., Chen, Z., Zhou, H., Yang, J., Cohen, Z., Zhu, Y., Zang, Y., 2015a. Spontaneous activity associated with delusions of schizophrenia in the left medial superior frontal gyrus: a resting-state fMRI study. PLos One 10, e0133766.
  6. Poppe, A.B., Barch, D.M., Carter, C.S., Gold, J.M., Ragland, J.D., Silverstein, S.M., MacDonald 3rd, A.W., 2016. Reduced frontoparietal activity in schizophrenia is linked to a specific deficit in goal maintenance: a multisite functional imaging study. Schizophr. Bull. 42, 1149–1157.

投稿者

tsujimoto.kengo8762@gmail.com

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2020年8月6日