
前頭葉の4つのループ
本日は、論文の図について説明していきたいと思います。
私たちは喉が乾けば水を飲みます。また、友人や職場での飲み会など社会的なつながりがあります。これらの水を飲む、飲み会に行くといった行動を起こすまでにはその行動の価値判断、確実性などの意思決定が必要になります。
本日は、行動計画までに前頭葉でどのようなことが起こっているのかを説明したいと思います。
タイトル:Unraveling the Mysteries of Motivation.
著者:Reilly R.
雑誌:Trends in Cognitive Sciences. 2020; 24(6): 425-434.
上記の論文に載っている図1を改変して説明します。
その図が下記になります。

私たちが何か行動をするときには前頭葉領域では主に4つの領域が関与しており、それぞれには大脳基底核と視床から構成されたループがあることがわかっています1)。
何か行動をする。例えば、水を飲むことや飲み会に行くことを考えてみます。
まず、水を飲むことや飲み会に行くことがなぜ必要かを判断しなければいけません。つまり、その行動を起こすことに価値はあるのかないのかを判断しなければいけません。
この価値を判断している領域が腹内側前頭前皮質、特に眼窩前頭皮質になります。また、この眼窩前頭皮質には扁桃体(好きか嫌いかを判断)や視床下部(自律神経調節)の皮質下領域からの投射があることがわかっています2)。
眼窩前頭皮質の損傷では、価値を判断することが困難となり、急激な変化に行動を適応させることが困難になることが報告されています3)。
次に眼窩前頭皮質で行動を起こす価値があると判断した場合にこの行動は現実的なのか、非現実的なのか、確実にできるのかできないのかを判断する必要があります。
この確実性を判断している領域が前帯状皮質になります。前帯状皮質はその行動を活性化する上で重要な役割を果たすことが報告されています4,5)。また、下記で述べる行動の計画の修正などがフィードバックされることがわかっています。
そして、背外側前頭前野で行動計画の選択、維持、誘導が行われ、他の脳領域とネットワークを形成することで他の脳領域に強く影響を与えることが報告されています。特に行動計画の感覚的側面を表す頭頂葉と広範囲に相互作用していることが報告されています6,7,8)。
そして、最後にこれらの情報は補足運動野に伝わり、実際の行動計画が行われるということになります。
執筆者:K
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参考文献
- Alexander, G. et al. (1986) Parallel organization of functionally segregated circuits linking basal ganglia and cortex. Annu. Rev. Neurosci. 9, 357–381.
- Ongür, D. and Price, J.L. (2000) The organization of networks within the orbital and medial prefrontal cortex of rats, monkeys and humans. Cereb. Cortex 10, 206–219.
- Balleine, B.W. and Dickinson, A. (1998) Goal-directed instrumental action: contingency and incentive learning and their cortical substrates. Neuropharmacology 37, 407–419.
- Stuss, D.T. and Alexander, M.P. (2007) Is there a dysexecutive syn- drome? Philos. Trans. R. Soc. Lond. Ser. B Biol. Sci. 362, 901–915.
- Holroyd, C.B. and Yeung, N. (2012) Motivation of extended behaviors by anterior cingulate cortex. Trends Cogn. Sci. 16, 122–128.
- Miller, E.K. and Cohen, J.D. (2001) An integrative theory of prefrontal cortex function. Annu. Rev. Neurosci. 24, 167–202.
- 37. Desimone, R. (1996) Neural mechanisms for visual memory and their role in attention. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 93, 13494–13499.
- O’Reilly, R.C. et al. (1999) A biologically based computational model of working memory. In Models of Working Memory: Mechanisms of Active Maintenance and Executive Control (Miyake, A. and Shah, P., eds), pp. 375–411, Cambridge University Press.