医療従事者・研究者用ノート

小脳と加齢

本日は、健常者の中年期から老年期における小脳の形態変化と小脳内および大脳-小脳の結合の変化と認知機能との関連を明らかにした論文を紹介します。

タイトル:Cognitive function and cerebellar morphometric changes relate to abnormal intra-cerebellar and cerebro-cerebellum functional connectivity in old adults.

著者:Uwisengeyimana J, Nguchu BA, Wang Y, Zhang D, Liu Y, Qiu B, Wang X.

雑誌:Experimental Gerontology. 2020 (Journal Pre-proof)

研究の背景

ヒトの加齢が神経系に及ぼす影響については、これまでに死後の研究からfMRIの研究までさまざまな研究が行われています。

死後の研究では、60歳以上の健常人でも脳の容量の減少が見られることが報告されています1)

fMRIの研究では、加齢に伴う灰白質体積の減少、加齢によって前頭前野の領域では容積に変化が見られたが、後頭葉領域では比較的変化は見られないことが明らかになっています2,3)。また、加齢によって認知機能の低下や運動機能の低下との関連性を示した報告があります4,5)

加齢に伴う小脳の体積減少は報告されていますが、特に加齢に伴う安静時状態での小脳内の結合や大脳-小脳の結合に焦点を当てた研究が限られています。

本研究の目的は、中年期から老年期における小脳の形態変化と小脳内および大脳-小脳の結合の変化と認知機能との関連を明らかにすることです。

方法

・被験者は認知障害がない40〜90歳までの健常高齢者264名であった。

・3TのMRI装置を用いて、6分間の安静時脳活動を2回測定した。

・認知機能はTrail Making Test (TMT) AおよびBとMini-Mental State Examination (MMSE)を測定した。また論理的記憶検査では、Wechsler memory scale-revisedのサブテストを用いて評価した。

結果

・図1は年齢別の小脳の体積の変化を示しています。小脳のさまざまな領域で高齢になるにつれて体積が減少していることが明らかになった。

図1

・図2は小脳と大脳皮質の領域との安静時機能的結合を年齢別に比較しています。特に高齢になると小脳と大脳基底核(線条体)、内側側頭葉(海馬)、デフォルトモードネットワーク(前帯状回、内側前頭前野、上前頭皮質)で機能的結合の低下が認められた。

図2

・図3は高齢者の安静時機能的結合と認知機能との相関関係を示しています。左小脳皮質crusⅡと右前帯状回の安静時機能的結合とTMT-Bとの間に有意な負の相関が認められた。また、左小脳皮質crusⅡと右前帯状回の安静時機能的結合と論理的記憶との間に有意な正の相関が認められた。

図3

まとめ

・本研究では、小脳の形態変化と小脳内および大脳-小脳の結合の変化と認知機能との関連を調べました。

・中年期から老年期になるにつれて小脳小葉容積の減少が統計学的に有意であることがわかりました。また、安静時機能的結合でも年齢によってさまざまな領域で有意差が認められました。特に高齢になると小脳と大脳基底核、内側側頭葉、デフォルトモードネットワーク間の機能的結合が低下することがわかりました。さらに、左小脳と右前帯状回間の機能的結合と認知機能、記憶に相関が認められました。

・小脳の体積や機能的結合と加齢との関連性、認知機能との関連性を理解することは、正常な加齢に伴う神経心理学的疾患の特徴を理解するために重要である。

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参考文献

  1. Andersen, B. B., Gundersen, H. J. G., & Pakkenberg, B. (2003). Aging of the human cerebellum: A stereological study. Journal of Comparative Neurology, 466(3), 356–365.
  2. Chung, Y., Haut, K. M., He, G., van Erp, T. G. M., McEwen, S., Addington, J., Bearden, C. E., Cadenhead, K., Cornblatt, B., Mathalon, D. H., McGlashan, T., Perkins, D., Seidman, L. J., Tsuang, M., Walker, E., Woods, S. W., Cannon, T. D., & Consortium, N. A. P. L. S. (NAPLS). (2017). Ventricular enlargement and progressive reduction of cortical gray matter are linked in prodromal youth who develop psychosis. Schizophrenia Research, 189, 169–174.
  3. Raz, N., Gunning-Dixon, F., Head, D., Williamson, A., & Acker, J. D. (2001). Age and Sex Differences in the Cerebellum and the Ventral Pons: A Prospective MR Study of Healthy Adults. American Journal of Neuroradiology, 22(6), 1161 LP – 1167.
  4. Park, D. C., Polk, T. A., Mikels, J. A., Taylor, S. F., & Marshuetz, C. (2001). Cerebral aging: integration of brain and behavioral models of cognitive function. Dialogues in Clinical Neuroscience, 3(3), 151–165.
  5. Seidler, R. D., Bernard, J. A., Burutolu, T. B., Fling, B. W., Gordon, M. T., Gwin, J. T., Kwak, Y., & Lipps, D. B. (2010). Motor control and aging: links to age-related brain structural, functional, and biochemical effects. Neuroscience and Biobehavioral Reviews, 34(5), 721–733.

投稿者

tsujimoto.kengo8762@gmail.com

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