医療従事者・研究者用ノート

前頭前野と線条体間のネットワークは衝動性を予測できる

衝動性とは、後先考えずに行ってしまう行動特性を指します。衝動性が高すぎる場合は犯罪や精神疾患などを引き起こす可能性があります。本日は、前頭前野と線条体の機能的結合が衝動性をどの程度予測できるかを調べた研究を紹介します。

タイトル:Dissociable fronto‑striatal functional networks predict choice impulsivity.

著者:Wang Q, Lv C, He Q, Xue G.

雑誌:Brain Structure and Function. 2020

研究の背景

衝動性とは、軽率な行動、計画性の欠如、または以前の反省や慎重な検討をせずに起こす行動のことを指します1)。選択行動による衝動性(選択衝動性)は衝動性の最も重要なサブタイプの1つです。例えば、選択衝動性が低い未就学児は認知的にも社会的にも有能な青年に成長する傾向があり、学業が向上し、ストレスに対処するための能力があると報告されています2)

一般的に遅延報酬課題は、衝動的な選択を評価・測定するために使用される課題です3,4)。この課題は、すぐにもらえる小さな報酬(即時報酬)か後でもらえる大きな報酬(遅延報酬)かを選択する必要があります。もし、即時報酬の選択の割合が高ければ、薬物乱用5)、病的ギャンブル6)、ADHD7)などの様々な精神疾患の有望なバイオマーカーとして用いられます。

大脳基底核の線条体は運動、認知、動機付け、報酬の処理などの機能があり重要な部分であると報告されています8)。特に線条体の腹側部(側坐核を中心とした領域)は、遅延報酬評価9)、即時選択処理10)などのモチベーションや報酬関連の処理に関与しています。さらにこれらの領域の機能的結合の強さや正と負のフィードバックに対する腹側線条体の活動は選択衝動性を予測できると報告されています11)。また、近年では背側前頭前野は後先を考えた即時報酬と遅延報酬の選択に関与することが明らかになっています12)

しかし、選択衝動性に関与している背側前頭前野と線条体の関係が選択衝動性にどのように関連しているのかは明らかではありません。

本研究は、背側前頭前野と線条体の関係と選択衝動性との関連を調べました。

方法

・被験者は17〜26歳の429名(男性:315名、平均年齢:19.58±1.59歳)でした。

・衝動性の評価は遅延報酬課題を行いました。(詳細な方法省略)

・機能的MR画像は3TのMR装置を用いて、T1強調画像と安静時脳活動を測定しました。(詳細な処理過程省略)

結果

・側坐核と中前頭回/背側前頭前野間の機能的結合および尾状核と背側前頭前野間の機能的結合は個々の遅延報酬率(大きな報酬を選択する率)を予測できる因子であることが明らかになった。しかし、被殻と前頭前野間の機能的結合は予測できる因子ではなかった(図1)。

図1

図a-cは、安静時機能的結合の結果を示しており、d,eは機能的結合と遅延報酬率との相関を示しています。

まとめ

・本研究では、前頭前野と線条体の機能的結合が遅延報酬課題で評価される選択衝動性をどの程度予測できるかを調べました。

・側坐核と中前頭回/背側前頭前野間の機能的結合および尾状核と背側前頭前野間の機能的結合は遅延報酬率を予測できる可能性があることが明らかになりました。

・これらの知見は、前頭前野と線条体間の機能的結合が選択衝動性の神経機構に重要である可能性を示唆しています。

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参考文献

  1. Dawe S, Gullo MJ, Loxton NJ (2004) Reward drive and rash impulsiveness as dimensions of impulsivity: implications for substance misuse. Addict Behav 29(7):1389–1405.
  2. Mischel W, Shoda Y, Rodriguez MI (1989) Delay of gratification in children. Science 244(4907):933–938.
  3. Bari A, Robbins TW (2013) Inhibition and impulsivity: behavioral and neural basis of response control. Prog Neurobiol 108:44–79.
  4. Dalley JW, Everitt BJ, Robbins TW (2011) Impulsivity, compulsivity, and top-down cognitive control. Neuron 69(4):680–694.
  5. Hu S, Ide JS, Zhang S, Sinha R, Chiang-shan RL (2015) Conflict anticipation in alcohol dependence—a model-based fMRI study of stop signal task. NeuroImage Clin 8:39–50.
  6. Alessi S, Petry NM (2003) Pathological gambling severity is associated with impulsivity in a delay discounting procedure. Behav Proc 64(3):345–354.
  7. Paloyelis Y, Asherson P, Mehta MA, Faraone SV, Kuntsi J (2010) DAT1 and COMT effects on delay discounting and trait impulsivity in male adolescents with attention deficit/hyperactivity disorder and healthy controls. Neuropsychopharmacology 35(12):2414.
  8. Di Martino A, Scheres A, Margulies DS, Kelly A, Uddin LQ, Shehzad Z, Biswal B, Walters JR, Castellanos FX, Milham MP (2008) Functional connectivity of human striatum: a resting state FMRI study. Cereb Cortex 18(12):2735–2747.
  9. Kable JW, Glimcher PW (2007) The neural correlates of subjective value during intertemporal choice. Nat Neurosci 10(12):1625.
  10. McClure SM, Laibson DI, Loewenstein G, Cohen JD (2004) Separate neural systems value immediate and delayed monetary rewards. Science 306(5695):503–507.
  11. Hariri AR, Brown SM, Williamson DE, Flory JD, de Wit H, Manuck SB (2006) Preference for immediate over delayed rewards is associated with magnitude of ventral striatal activity. J Neurosci 26(51):13213–13217.
  12. Wang Q, Luo S, Monterosso J, Zhang J, Fang X, Dong Q, Xue G (2014) Distributed value representation in the medial prefrontal cortex during intertemporal choices. J Neurosci 34(22):7522–7530.

投稿者

tsujimoto.kengo8762@gmail.com

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2020年8月24日