
テレビゲームと創造性
これまでのテレビゲームに関する研究は攻撃性や視空間認知に着目されています。
本日は、プレイヤーが自由に育成できるゲーム(あつ森や牧場物語など)である創造性を育むゲームが創造性の尺度に影響を与えるのかを調べた研究を紹介します。
タイトル:Video Games can Increase Creativity, but with Caveats.
著者:Blanco-Herrera JA, Gentile DA, Rokkum JN.
雑誌:Creativity Research Journal. 2019;31(2):119-131.
研究の背景
テレビゲームの影響に関する研究の大半は、攻撃性や視空間認知に着目しています。攻撃性や暴力的なゲームをしている人は非暴力的なゲームをしている人よりも実際の日常生活でも攻撃性が高いことが明らかになっています1,2)。
また、視覚的合図に対して素早く反応するゲームをする人は日常生活でもさまざまなことに対して反応時間が速く、視覚的・空間的試行課題のパフォーマンスが向上するというメリットが報告されています3,4)。
一方で、ロールプレイングゲームでは、プレイヤーは架空の世界でキャラクターを育成し、ゲーム攻略のための戦略や創造性が必要になってきます。また、対戦型ゲームでも、創造的な戦略で対戦相手に勝利した場合に報酬を得ることができます。これらは、プレイヤーが戦略を再考し、戦闘に勝利できるような戦略を追求することで、創造性を育むことができます。
しかし、テレビゲームで創造性に着目した研究はありません。
本研究では、創造性に着目して短時間の創造性を育むゲームをすることで創造性の尺度に影響を与えるのかを検証しました。
方法
・被験者は352名の学部生(男性:46%、平均年齢:19.3±1.67歳)でした。また、被験者の89.8%は過去6ヶ月間に何らかのゲームをしたと回答しています。
・参加者は無作為に4つのグループのうちの1つに振り分けられました。それぞれゲームやテレビ視聴を45分間行いました。
・4つのグループは以下でした。
- 日本でいう「牧場物語」や「あつまれ どうぶつの森」のようなプレイヤーが自由に育成できるゲームのグループ
- ①のゲームであるがプレイヤーは自由に育成できず、検査者が育成を指示するグループ
- 車の運転ゲームのグループ
- テレビ番組の視聴のグループ
・創造性の評価は以下の4つの課題を行いました
・Imaginative Capability Scale(ICS)
この課題は29項目からなる尺度から構成されており、被験者は1(全く一致しない)から6(すごく一致する)までの尺度で、それぞれの状態に対して答えました。
・拡散的思考タスク(alternative uses task(AUT))
この課題は2分間でナイフ、クリップ、新聞紙の用途をできる限り多く答えさせる課題です。
・遠隔連想テスト(remote association test(RAT))
この課題は単語を3つ見せて各単語に関連する単語を答える課題です。例えば、日本であれば「異」、「口」、「序」という漢字が示されている場合は、「論」という漢字が関連しているということになります。「異論」、「口論」、「序論」となります。
・Alien Drawing Task (ADT)
この課題は7分間で地球外生命体を想像して描いてもらう課題です。描かれた絵は、目、手足、左右対称性の3つのカテゴリーで採点されます。人間のような二面対称、目が2つ、手足が4本の生物は、各カテゴリーで0点、非対称性で、目が2つ以上またはそれ以下であり、四肢が4つ以上またはそれ以下である生物は、各カテゴリーで1点、非対称性、目であるが見た目が目ではない目の構造、または四肢であるが見た目が四肢でない四肢の構造を持つ生物は、各カテゴリーで2点の点数が付けられました。
結果
条件①の日本でいう「牧場物語」や「あつまれ どうぶつの森」のようなプレイヤーが自由に育成できるゲームのグループはその他の3つのグループと比較して、ゲーム後の創造性の尺度が有意に高いことがわかりました(図1,2)(論文内には他の結果の図や表があります)。


まとめ
・本研究では、創造性に着目して短時間の創造性を育むゲームをすることで創造性の尺度に影響を与えるのかを検証しました。
・プレイヤーが自由に育成できるゲームは拡散的思考課題、遠隔連想テスト、Alien Drawing Taskで高いパフォーマンスを示しました。
・これらのことからプレイヤーが自由に育成できるゲーム(牧場物語やあつ森など)は短時間(45分程度)でも創造性の尺度に影響を与えることがわかりました。
・また、テレビゲームが子供に与える影響については良い面(創造性や思考能力)と悪い面(感受性の低下や攻撃性)があります。親はこれらの両方を理解した上で子供にテレビゲームを与える必要があります。
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参考文献
- Anderson, C. A., Shibuya, A., Ihori, N., Swing, E. L., Bushman, B. J., Sakamoto, A., … Saleem, M. (2010). Violent video game effects on aggression, empathy, and prosocial behavior in eastern and western countries: A meta-analytic review. Psychological Bulletin, 136(2), 151.
- Gentile, D. A., Li, D., Khoo, A., Prot, S., & Anderson, C. A. (2014). Practice, thinking, and action: Mediators and moderators of long-term violent video game effects on aggressive behavior. JAMA-Pediatrics, 168, 450–457.
- Achtman, R. L., Green, C. S., & Bavelier, D. (2008). Video games as a tool to train visual skills. Restorative Neurology and Neuroscience, 26 (4), 435–446.
- Green, C. S., & Bavelier, D. (2003). Action video game modifies visual selective attention. Nature, 423(6939), 534–537.