
半側空間無視の病態失認の解釈
半側空間無視の病態失認を評価する一般的な方法として、Catherine Bergego Scale(CBS)の評価者がつけた点数と患者自身がつけた点数の差を計算することで病態失認の有無を評価することができます。
例えば、評価者が3点(重度の無視)、患者自身が0点(無視なし)の点数を付けたとします。
これは3―0=3点となり、病態失認があるという意味になります。
次に評価者が1点(軽度の無視)、患者自身が1点(軽度の無視)の点数を付けたとします。
これは1−1=0点となり、病態失認はないことを意味します。
では、評価者が1点(軽度の無視)、患者自身が3点(重度の無視)の点数を付けたとします。
これは1―3=–2点になります。
これは、病態失認はないのでしょうか?
それともあるのでしょうか?
結論から言うと、病態失認があると考えられると私は考えています。
その理由を以下に述べます。
これは患者が自分には半側空間無視があると自覚はしていると考えられ、病態失認ではないと解釈されるかもしれません。
また、自分を過小評価しているということで日常生活では左が注意しにくいということを患者自身は理解している可能性が高く日常生活では問題にはならないかもしれません。
しかし、自分の今の病態や状態を理解しているかというとまた違う話になってきます。
このマイナスについては、CBSを用いているいくつかの先行研究でにマイナスのスコアが記載されていたりしますが、それについての議論はほとんどありません。
そこで、患者自身が自分の病態を把握している、していないについて考えたときに、マイナスの数値は0よりも自分の病態を把握しているとは言えないと考えています。
逆に自分の病態を把握できていないのではないかと考えることができます。
そのため、マイナスの数値を絶対値に変換して計算した方がいいのではないかと考えています。
つまり、-2点の場合は、病態失認スコアは2点ということになります。
そして現在(2020年9月)、私が論文を投稿中であるため詳しいことは記載できませんが、CBSスコアと病態失認スコアの相関、CBSスコアと絶対値に変換した病態失認スコアの相関を解析したところ、病態失認スコアを絶対値に変換した方がCBSスコアとの相関が高いことがわかりました。
つまり、病態失認スコアを絶対値に変換した方が患者の病態を表している可能性があるということが考えられます。
したがって、半側空間無視の病態失認スコアは絶対値に変換して表した方が良いのではないかと考えています。
この件は、現在論文投稿中ですので、論文がアクセプトされたら、さらに詳しく説明したいと思います。
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