医療従事者・研究者用ノート

脳内ネットワークからワーキングメモリー機能を予測する

加齢に伴うワーキングメモリーの機能が低下することは多くの論文で報告されており、安静時機能的結合も変化することが報告されています。しかし、加齢がワーキングメモリーと安静時機能的結合との関係にどのような影響を与えているのかは明らかではありません。

本日は、若年者と高齢者で8つの安静時機能的結合と全脳コネクトームからワーキングメモリー機能の予想できるかを検討した論文を紹介します。

タイトル:Age differences in predicting working memory performance from network-based functional connectivity.

著者:Plaschke RN, Patil KR, Cieslik EC, Nostro AD, Varikuti DP, Plachti A, et al.

雑誌:Cortex. 2020:1-19

研究の背景

認知機能や実行機能の低下は、正常な加齢の一部として認識されている1)。特にワーキングメモリーは情報を一時保持、更新、操作したりする能力であり、加齢に伴う低下が報告されている2)

いくつかの研究では、加齢によるワーキングメモリーの低下を安静時機能的結合の変化で部分的に説明できる可能性を示している3,4)。しかし、加齢がワーキングメモリーと安静時機能的結合との関係にどのような影響を与えているのかは明らかでない。

そこで、本研究では若年者と高齢者で分けて、メタ解析により定義された8つの安静時機能的結合と全脳コネクトームからワーキングメモリーの予想を検討した。

方法

・被験者は若年者50名(年齢範囲:20-34歳)と高齢者45名(年齢範囲:51-71歳)であった。

・ワーキングメモリー課題はオペレーションおよびリーディングスパンテストを行った。

・MR撮像は3TのMR装置を用いて、安静時磁気共鳴画像を撮像した。

・得られたデータから図1の8つのネットワークと全脳コネクトームからワーキングメモリーの予測可能性を検討した。

図1

結果

・若年者では、各ネットワークからワーキングメモリーの予測をすることは不可能であった。

・一方で高齢者では各ネットワークからワーキングメモリーを予測することが可能であった。

・また、高齢者をワーキングメモリーの機能が低い群と高い群に分けた場合、ワーキングメモリーの機能が高い群は、”心の理論“のネットワーク、運動-感覚ネットワークでのみ予測が可能であったのに対して、ワーキングメモリー機能が低い群はすべてのネットワークで予測が可能であった。

まとめ

・本研究では、8つのネットワークと全脳コネクトームが若年者と高齢者のワーキングメモリー機能を予測できるかを検討した。

・若年者はネットワークの機能的結合性からワーキングメモリーを予測することはできなかったが、高齢者では予測することが可能であった。

・高齢者では、さまざまなネットワークの機能的結合の低下や変化、代償的な結合性の変化、神経レベルでの再編成の可能性や組み合わせが異なることが示唆された。

参考文献

  1. Glisky, E. L. (2007). Changes in cognitive function in human aging. In D. R. Riddle (Ed.), Brain aging: Models, methods, and mechanisms. CRC Press/Taylor & Francis.
  2. Braver, T. S., & West, R. (2008). Working memory, executive control, and aging. In F. I. M. Craik, & T. A. Salthouse (Eds.), The handbook of aging and cognition (3rd ed.., pp. 311e372).
  3. Charroud, C., Le Bars, E., Deverdun, J., Steffener, J., Molino, F., Abdennour, M., et al. (2016). Working memory performance is related to intrinsic resting state functional connectivity changes in community-dwelling elderly cohort. Neurobiology of Learning and Memory, 132,57e66.
  4. Jockwitz, C., Caspers, S., Lux, S., Eickhoff, S. B., Jutten, K., Lenzen, S., et al. (2017). Influence of age and cognitive performance on resting-state brain networks of older adults in a population-based cohort. Cortex, 89,28e44.

投稿者

tsujimoto.kengo8762@gmail.com

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です