医療従事者・研究者用ノート

慢性疼痛の脳幹疼痛制御回路の変化

本日は、慢性疼痛における脳幹疼痛制御回路内の機能的結合および脳幹疼痛制御回路領域と大脳皮質領域との機能的結合の変化を調べた研究を紹介します。

タイトル:Brainstem pain-control circuitry connectivity in chronic neuropathic pain.

著者:Mills EP, Pietro FD, Alshelh Z, Peck C, Murray GM, Vickers E.R, Henderson LA.

雑誌:Journal of Neuroscience. 2018;38(2):465-473.

研究の背景

これまでの動物実験の研究により、脳幹には一次求心性シナプスのレベルで侵害受容性情報の入力を抑制または促進する複数の神経回路が存在することが明らかになっている。

これらの下行性調節回路には、脊髄後角、中脳水道周囲灰白質、吻側延髄腹内側部、青斑核、延髄背側網様亜核のような三叉神経脊髄路核が含まれ、急性の有害刺激を調節する役割に加えて慢性疼痛の発生にも関与していると報告されている1,2,3)。また、慢性疼痛患者において、これらの回路の機能が変化している可能性を示唆している論文がいくつかある4,5,6)。これらの研究は、脳幹の侵害受容性調節システムの持続的な機能の変化が、慢性疼痛の引き金かつ持続に重要な領域であることを示唆している。

しかし、脳幹の侵害受容性調節システムの領域がどのように機能的に変化しているのか明らかではない。

本研究は、三叉神経痛患者に対してこれらの脳幹疼痛制御回路間の接続性を安静時磁気共鳴画像を用いて調べた。また、脳幹疼痛制御回路の領域と大脳皮質領域との接続性も調べた。

方法

・被験者は三叉神経痛患者24名(男性8名、平均年齢46±3歳)と健常者46名(男性17名、平均年齢42±2歳)であった。

・三叉神経痛患者に対してVisual analog scaleを1日3回、7日間連続で調べた。また、1日3回の平均をその日の痛みスコアとした。また、McGill Pain Questionnaire (MPQ)も測定した。

・MR撮像は3TのMR装置を用いて撮像した。

結果

・図1は吻側延髄腹内側部と水道周囲灰白質(vIPAG)、青斑核(LC)、延髄背側網様亜核(SRD)、三叉神経脊髄路核(SpV)との機能的結合を三叉神経痛患者と健常者で比較しています。

図1

健常者と比較して三叉神経痛患者は、吻側延髄腹内側部とすべての領域との機能的結合が有意に高かった。

・図2上は水道周囲灰白質と側坐核(NAc)、左右視床(thalamus)、左右海馬(aHipp)との機能的結合、図2下は青斑核と島皮質(insula)、側坐核、前帯状皮質(ACC)、前頭葉(frontal)との機能的結合を三叉神経痛患者と健常者で比較しています。

図2

健常者と比較して三叉神経痛患者は、水道周囲灰白質および青斑核はすべての領域との機能的結合が有意に高かった。

・これらの機能的結合と痛みの強さまたは痛みの持続時間との間に有意な相関は認められなかった。

まとめ

・脳幹疼痛制御回路間および大脳皮質との接続性を安静時磁気共鳴画像を用いて調べた。

・三叉神経痛患者は、吻側延髄腹内側部とすべての領域(水道周囲灰白質、青斑核、延髄背側網様亜核、三叉神経脊髄路核)との機能的結合が高かった。また、大脳皮質の痛みに関与する領域との機能的結合も高かった。

・慢性疼痛は脳幹疼痛制御回路内および大脳皮質との接続性が増加していることが明らかになった。これらの変化は、一次シナプスの処理から下行性の促進が強化され、結果として大脳皮質との機能的結合の強さが増加していることが考えられる。

参考文献

  1. Basbaum AI, Fields HL (1984) Endogenous pain control systems: brainstem spinal pathways and endorphin circuitry. Annu Rev Neurosci 7:309–338.
  2. Heinricher MM, Tavares I, Leith JL, Lumb BM (2009) Descending control of nociception: specificity, recruitment and plasticity. Brain Res Rev 60: 214–225.
  3. Mason P (2012) Medullary circuits for nociceptive modulation. Curr Opin Neurobiol 22:640–645.
  4. Yarnitsky D (2010) Conditioned pain modulation (the diffuse noxious in- hibitory control-like effect): its relevance for acute and chronic pain states. Curr Opin Anaesthesiol 23:611–615.
  5. Nasri-Heir C, Khan J, Benoliel R, Feng C, Yarnitsky D, Kuo F, Hirschberg C, Hartwell G, Huang CY, Heir G, Korczeniewska O, Diehl SR, Eliav E (2015) Altered pain modulation in patients with persistent postendo- dontic pain. Pain 156:2032–2041.
  6. Garrett PH, Sarlani E, Grace EG, Greenspan JD (2013) Chronic temporo- mandibular disorders are not necessarily associated with a compromised endogenous analgesic system. J Orofac Pain 27:142–150.

投稿者

tsujimoto.kengo8762@gmail.com

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