
ダイエットはカロリーよりも○○時間が大切
ダイエットはカロリー制限をする必要があると思っている人は多いと思います。しかし、最近の研究によると痩せるためにはカロリー制限ではなく、○○時間が効果的であると言われています。
本日は1日のカロリーを制限せずに、○○時間を設けることで痩せやすくなるだけでなく、様々な効果があると報告されている論文を紹介します。
タイトル:Time-Restricted Eating: Benefits, Mechanisms, and Challenges in Translation.
著者:Regmi P, Heilbron K.
雑誌:iScience. 2020;23(6):101161.
空腹時間の効果
タイトルの○○に入る答えは「空腹」になります。つまり、ダイエットには「空腹時間」が大切であることが近年の研究から明らかになってきています。
ただ、空腹時間を設けたら1日の目安カロリーを大幅に超えても良いというわけではなく、あくまで1日の目安カロリーを制限しないでの話になりますのでそれを念頭に置いて、以下をお読み下さい。
糖尿病や心血管障害などの生活習慣に起因する代謝性疾患は肥満、運動不足、カロリーを多く含む食品の増加と関連しています。そして、食べた物を胃や腸などの消化器官が全て消化するのに約4,5時間程度かかります。
私たちは朝(7時)、昼(12時)、夜(19時)と3食の食事をして食べたら終わりですが、消化器官からしてみれば前に食べた物を消化し終わった頃に次の食物を消化することになります。
つまり、常に消化し続けていることになります。これらの蓄積が生活習慣病や慢性疾患の進行を早めることが明らかになっています1)。
そこで最近注目されている食事法がTime-Restricted Eating(TRE):時間制限食です。これはカロリー摂取量や食事の質を変えることなく、1日の食事の期間を短くする方法です。
例えば、朝(7時)、昼(12時)、夜(19時)を朝(10時)、昼(12時)、夜(17時)にする。つまり1日のうちで食事する時間を6〜10時間に集中させ、残りの空腹時間を長く取ることで消化器官を休める食事法です(図1)。

このTREは動物実験においてサーガディアンリズム(体内時計)が回復し、プレオトロピック作用(多面的効果)があることが多くの研究から明らかになっています2,3)。
さらに、ヒトにおいても、特に肥満の人で糖代謝の改善や体重および脂肪量の減少、血圧の低下、腸機能や心血管機能の向上が報告されています4,5,6)。
なぜ、時間制限食(食事時間を集中)が良いのか?
これは、上記で説明したように通常の時間帯の3食(例えば、朝(7時)、昼(12時)、夜(19時))では消化器官からしてみれば常に食べたものを消化し、その食べた物をエネルギーにしているため、いつまで経っても身体に蓄積された脂肪などはエネルギーとして消費されないからです。
しかし、食事する時間を集中させ、残りの時間を空腹にさせることでその空腹の時間のエネルギーは身体に蓄積されていた脂肪などをエネルギーとして消費するため痩せやすくなるというメカニズムです。(本来はもっと複雑ですが、簡単に説明しています)
では、24時間のうちで6〜10時間の食事を集中させる時間帯はいつでも良いのか?
結論から言うと、昼(12時)から夜(21時)に集中させるよりも朝(8時)から夕方(17時)に集中させた方がさまざまな研究結果から効果がありそうです。ただ、まだ研究途中であり、なんとも言えないのが現状のようです(2021月2月現在)。
ある研究によると、糖尿病患者に対して、1日3食(朝に高カロリー、夕食は軽め)と1日6食(夕方に高カロリー、その後、23時まで間食あり)の2群(どちらも総摂取カロリーは同じ)を比較すると、3食(夕食は軽め)の方が体重減少と治療のためのインスリン投与量は減少したと報告しています7)。
また同じグループの別の研究によると、肥満女性に対して、高カロリー朝食群と高カロリー夕食群を比較すると高カロリー朝食群の方が体重減少やウエストの減少が大きかったと報告しています8)。
これらの実験結果から食事の集中時間は1日の早い時間帯(朝から夕方)が良いと示唆されますが、時間制限食(TRF)の実験も代謝率は夜よりも朝の方が良いことから朝から開始されている実験が多く、時間帯を変えての検証はまだ十分なデータが揃っていないのが現状です。
ただ、今後の研究次第では朝の時間帯でも夜の時間帯でも時間を集中させれば効果は同じ(どちらも体重は減少する)という結果が出てくる可能性はあります。
現在のところは、活動している時間帯(朝から夕方)に集中させた方が体重減少の効果があるということになります。
まとめ
・ダイエットには空腹時間が大切であることがわかってきた。
・最近では、Time-Restricted Eating(TRE):時間制限食が注目されており、1日(24時間)のうち食事時間を6〜10時間に集中させる。
・現在(2021年2月)では、朝から夕方の時間帯に集中させた方が効果がある。
参考文献
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- Delahaye, L.B., Bloomer, R.J., Butawan, M.B., Wyman, J.M., Hill, J.L., Lee, H.W., Liu, A.C., McAllan, L., Han, J.C., and van der Merwe, M. (2018). Time-restricted feeding of a high fat diet in C57BL/6 male mice reduces adiposity, but does not protect against increased systemic inflammation. Appl. Physiol. Nutr. Metab. 43, 1033–1042.
- Gabel, K., Hoddy, K.K., Haggerty, N., Song, J., Kroeger, C.M., Trepanowski, J.F., Panda, S., and Varady, K.A. (2018). Effects of 8-hour time restricted feeding on body weight and metabolic disease risk factors in obese adults: a pilot study. Nutr. Healthy Aging 4, 345–353.
- Gill, S., and Panda, S. (2015). A smartphone app reveals erratic diurnal eating patterns in humans that can Be modulated for health benefits. Cell Metab. 22, 789–798.
- Villanueva, J.E., Livelo, C., Trujillo, A.S., Chandran, S., Woodworth, B., Andrade, L., Le, H.D., Manor, U., Panda, S., and Melkani, G.C. (2019). Time-restricted feeding restores muscle function in Drosophila models of obesity and circadian-rhythm disruption. Nat. Commun. 10, 2700.
- Jakubowicz, D., Landau, Z., Tsameret, S., Wainstein, J., Raz, I., Ahren, B., Chapnik, N., Barnea, M., Ganz, T., Menaged, M., et al. (2019). Reduction in glycated hemoglobin and daily insulin dose alongside circadian clock upregulation in patients with type 2 diabetes consuming a three-meal diet: a randomized clinical trial. Diabetes Care 42, 2171–2180.
- Jakubowicz, D., Barnea, M., Wainstein, J., and Froy, O. (2013). High caloric intake at breakfast vs. dinner differentially influences weight loss of overweight and obese women. Obesity (Silver Spring) 21, 2504–2512.