医療従事者・研究者用ノート

疲労を感じる脳領域

私たちは同じ作業を繰り返したり、集中したり、記憶しようとすると疲れを感じます。一般的には脳が疲れたと言われますが、この脳が疲れたとは、どの領域で感じるのでしょうか?

本日は、脳が疲れた(認知的疲労)について調べた論文を紹介します。

タイトル:Using functional connectivity changes associated with cognitive fatigue to delineate a fatigue network.

著者:Wylie G.R, Yao B, Genova H.M, Chen M.H and DeLuca J.

雑誌:Scientific reports.2020;10(1):21927.

研究の背景

私たちは何かに集中したり、記憶したり、長時間の作業などを行うことによって疲労を感じます。これは、認知的な(注意や記憶などの)作業による疲労であり、認知的疲労になります(一般的に脳が疲れたと感じること)。

この認知的疲労は大脳基底核1)、腹内側前頭前野2)、背側前帯状皮質3)、背外側前頭前野4)、前島皮質5)が関係しているとさまざまな論文から明らかになってきています。これらの領域は主に報酬系に関与しています。

なぜ、疲労が報酬系と関与しているのか?

その理由として、何かに集中しているときはその課題を成し遂げようとしている場合が多く、その課題の達成によって期待される報酬に依存しているからです。例えば、仕事を集中して成し遂げることはお金という報酬を貰う、スポーツで練習に集中することはライバルに勝つという報酬を得るために行うことになります。

しかし、何かに集中したけどそれを成し遂げられなかったときは成し遂げたときよりも疲労をより感じる人がほとんどです。

この認知的疲労の増加はモチベーションの低下、さらに課題のパフォーマンスの低下に関連しています。

しかし、これらの脳領域が認知的疲労に関与していることは明らかですが、各領域がどのように相互作用しているかは明らかではありません。

本研究は、これらの脳領域間の機能的結合が認知的疲労によってどのように変化するのかを調べることです。

方法

・被験者は健常成人39名(女性15名、平均年齢:43.8歳±11.7歳)であった

・課題はn-back課題というワーキングメモリ課題が提示され、負荷が低い0バック条件と負荷が高い2バック条件を実施した。

https://ja.wikipedia.org/wiki/Nバック課題

・脳画像は課題中に撮像した。

結果

・図1は認知的疲労に関連していると言われている領域間の機能的結合を示しています。(V1:第一次視覚野、dACC:背側前帯状皮質、DLPFC:背外側前頭前野、Insula:島皮質、vmPFC:腹内側前頭前皮質、Striatum:線条体)

図1

全体的に認知的疲労時には各領域間の機能的結合は低下することが明らかになった。

特に島皮質-線条体、島皮質-腹内側前頭前皮質、腹内側前頭前皮質-背外側前頭前野のネットワークが認知的疲労に関与していることが明らかになった。

まとめ

・本研究では認知的疲労に関連する脳領域間の関係性を明らかにした。

・認知的疲労によりこれまで疲労に関連すると言われていた領域間の機能的結合が低下することが明らかになった。

・特に線条体、背外側前頭前野、島皮質、腹内側前頭前野は認知的疲労を構成するネットワークの中心的な「ハブ」であることがわかった。

・この結果は、今後、健常者と疾患などのストレスによる疲労などを調べる上で基礎となる情報である。

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参考文献

  1. Wylie, G. R. et al. Fatigue in Gulf War Illness is associated with tonically high activation in the executive control network. Neuro‑ Image Clin. (2018).
  2. Wylie, G. R. et al. Cognitive fatigue in individuals with traumatic brain injury is associated with activation of the caudate. Sci. Rep. 7, 8973 (2017).
  3. Müller, T. & Apps, M. A. J. Motivational fatigue: a neurocognitive framework for the impact of effortful exertion on subsequent motivation. Neuropsychologia 123, 141–151 (2019).
  4. Blain, B., Hollard, G. & Pessiglione, M. Neural mechanisms underlying the impact of daylong cognitive work on economic deci- sions. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 113, 6967–6972 (2016).
  5. Wittmann, M. K. et al. Predictive decision making driven by multiple time-linked reward representations in the anterior cingulate cortex. Nat. Commun. s1232 7 (2016).

投稿者

tsujimoto.kengo8762@gmail.com

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2021年3月1日