医療従事者・研究者用ノート

創造性の脳領域

創造力とは、何か新しく価値のあるものを生み出す力のことですが、子供の頃から創造力を鍛える本や創造力を鍛える○○の方法の本などを見ることがあります。

では、創造力は脳のどの領域が関与しているのでしょうか?

本日は、創造力について調べた論文を紹介します。

タイトル:Modulation of creativity by transcranial direct current stimulation.

著者:Hertenstein E, Waibel E, Frase L, Riemann D, Feige B, Nitsche MA, Kaller CP, Nissen C.

雑誌:Brain Stimulation. 2019; 12: 1213-1221.

研究の背景

相対性理論で有名なアインシュタインは

” Logic will get you from A to B. Imagination will take you everywhere.” 「理論はA地点からB地点まで連れて行ってくれる。創造力は、あなたをどこへでも連れて行ってくれる。」と名言を残しています。

これは、「枠にとらわれない思考」が大切であることを述べています。創造性は成功のための1つの要因であり、特に競争環境の中での人間の進化には大切です。

しかし、創造性を理解することは難しく、創造性を高める方法を確立することを目的に創造性の神経機構の研究が進められています。

現在までに創造性について明らかになっていることは、創造性はアイデアの生成(オリジナルの生成)とアイデアの選択(有用な選択)の2つのプロセスから構成されていることが明らかになっています1)

そして、この創造性について2つの有名な仮説があります。

半球間バランス仮説前頭葉活性化仮説です。

半球間バランス仮説は、左半球の前頭前野よりも右半球の前頭前野が活性化していると創造性が促進されるという仮説です2)

この仮説を支持する報告として、左前頭前野損傷で左前頭前野の脳活動が低下し、相対的に右前頭前野の脳活動が増加した患者では、アイデア生成課題のパフォーマンスが向上していたのに対して、右前頭前野損傷の患者ではアイデア生成課題のパフォーマンスは低下したと報告しています3)

さらに、右前頭前野の灰白質の体積が増加している健常者や先天的に左前頭前野の構造的に異方性が認められる人は創造的パフォーマンスが高かったと報告しています4,5)

一方で、上記の損傷患者の研究とは対照的に健常者のfMRI研究では、創造性は両側の前頭前野の活性化が大切であると報告されています6,7)。しかし、fMRI研究はあくまで関連性のある根拠であり、脳活性パターンと創造性パフォーマンスの因果関係をさらに明らかにする必要があります。そのためには、大脳皮質の活動を調整する介入研究が必要となってきます。

そこで、本研究では経頭蓋直流電流刺激(tDCS)を用いて前頭前野の活性パターンを変調させることで創造性の神経機構を解明することを目的としました。

方法

・被験者は健常な大学生90名(男性:45名、年齢:23.8±2.3)であった。

・創造性の課題は、拡散的思考課題(Alternate Uses Task)、洞察課題(Compound Remote Associate Task)、前頭葉機能検査(Wisconsin Card Sorting Task)を行った。

・そして、tDCSを用いて、左前頭前野を活性化させる刺激、右前頭前野を活性化させる刺激、何も刺激しない3つのセッションを試行した。

・また、脳波も測定した。

結果

図1は右前頭前野を活性化中(L-R+)、左前頭前野を活性化中(L+R-)、刺激なし中(Sham)の創造性の課題の結果を示しています。

図1

結果は、右前頭前野の脳活動を高めたときは3つの創造性の課題の点数が優れていたのに対して、左前頭前野の活動を高めたときは点数が劣っていました。

・また、脳波の結果では、右前頭前野の脳活動を高めることでβ波(皮質活動の増加を示すもの)が増加しており、課題パフォーマンスと関連が認められた。

まとめ

・本研究では、創造性が左右の前頭前野のどちらが重要かを検証しました。

・結果は、右前頭前野を活性化、左前頭前野を不活性化が創造性の増大と関連していることがわかりました。

・この知見は、精神障害患者や健常者の創造性を高める応用に使用できると考えられます。

・また、プレイヤーが自由に育成できるゲーム(あつ森や牧場物語など)は創造性の尺度に影響を与えることが明らかになっています。

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参考文献

  1. Weinberger AB, Green AE, Chrysikou EG. Using transcranial direct current stimulation to enhance creative cognition: interactions between task, polarity, and stimulation site. Front Hum Neurosci 2017;11:246.
  2. Mihov KM, Denzler M, F€orster J. Hemispheric specialization and creative thinking: a meta-analytic review of lateralization of creativity. Brain Cogn 2010;72:442e8.
  3. Shamay-Tsoory SG, Adler N, Aharon-Peretz J, Perry D, Mayseless N. The origins of originality: the neural bases of creative thinking and originality. Neuro- psychologia.2011;49:178e85.
  4. Takeuchi H, Taki Y, Sassa Y, Hashizume H, Sekiguchi A, Fukushima A, et al. Regional gray matter volume of dopaminergic system associate with creativity: evidence from voxel-based morphometry. Neuroimage 2010;51: 578e85.
  5. Jung RE, Grazioplene R, Caprihan A, Chavez RS, Haier RJ. White matter integrity, creativity, and psychopathology: disentangling constructs with diffusion tensor imaging. PLoS One 2010;5:e9818.
  6. Lie C-H, Specht K, Marshall JC, Fink GR. Using fMRI to decompose the neural processes underlying the Wisconsin Card Sorting Test. Neuroimage 2006;30: 1038e49.
  7. Specht K, Lie C-H, Shah NJ, Fink GR. Disentangling the prefrontal network for rule selection by means of a non-verbal variant of the Wisconsin Card Sorting Test. Hum Brain Mapp 2009;30:1734e43. 

投稿者

tsujimoto.kengo8762@gmail.com

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