一般向けノート

男女の睡眠と記憶の違い

男性と女性では脳の解剖学的な違いや脳が活動する領域に違いや問題解決時の戦略の違いなどさまざまな違いがあることがわかっています。本日は、睡眠と記憶に着目して男性と女性の違いを説明した論文を紹介します。

タイトル:Sex and Menstrual Phase Influences on Sleep and Memory.

著者:Alonso A, Genzel L, Gomez A.

雑誌:Curr Sleep Medicine Rep. 2021.

男女差は行動も脳機能も影響することが知られているが、多くの研究では男女を一緒にして調べていることが多く性差とその関連性は見過ごされている事が多いです1)

このレビューでは一般的な性差に加えて、性差の特定の側面(特に月経周期)が睡眠と学習にどのような影響を及ぼすかを説明します。

睡眠の質

女性は同年代の男性と比較して、睡眠の質が悪い事が報告されており、主観的な睡眠の質も悪い事が報告されています2,3)。また、女性の方が不眠症に悩まされやすいことも報告されています。この不眠症は年齢が上がる(更年期障害の発症)につれて増加していきます4)。これらの理由として、睡眠の概日リズムが関係しています。男性と比較して、女性の方が月経周期による体温変化やメラトニン(睡眠ホルモン)の分泌のリズムが短く、早いことが明らかになってきました2)。メラトニンは脳の松果体から夜間に放出され午前2-3時をピークとされていますが、女性の場合はピークがもっと早い事がわかってきています。つまり、まだ就寝していない時にメラトニンの分泌のピークがくる可能性があるため睡眠の質が低くなる事が示唆されています(まだ研究途中で十分に明らかではないため、論文の考察の一部です)。

特に不眠症は月経前に多いことが明らかになっています5)。月経前には卵胞刺激ホルモンとエストロゲンが上昇します。これらのホルモンの分泌が精神的な不安や月経による生活の乱れを引き起こし、不眠症をさらに悪化させると言われています6)

では、どうしたらいいのか?

例えば、10分程度の昼寝をすることも効果的であると報告されています7)。日中に10分程度の昼寝をした女性グループでは日中の眠気が少なくなり、主観的な睡眠の質が向上したことが明らかになっています。

認知機能(記憶)

多くの研究8,9,10)では、男性と女性の記憶課題に対するパフォーマンスが一貫して異なることがわかっています。例えば、単語や物語を思い出す能力、人物の認識は平均して女性の方が優れていることがわかっています。また、言語の流暢さも女性の方が優れている事がわかっています。一方で男性は、物体位置記憶課題(空間的認識)は男性の方が優れていることがわかっています。

これらの違いは脳の構造的および生理的な違いがあることが言われています。例えば、扁桃体は「好き・嫌い」を判断する領域ですが、左扁桃体は文脈に沿った認識に関与しており、右扁桃体は要点の認識に関与していると報告されています11)。そして、女性の場合は左扁桃体が活性化しやすく、男性は右扁桃体が活性化しやすいため、女性は文脈に沿った前後の繋がりから推察する能力が高く、男性は要点と要点を繋ぎ合わせて推察する能力が高くなります。

また、課題を解決するための戦略が男性と女性では異なっていることが明らかになっています。例えば、道順を思い出す課題では、女性の場合は自分を中心とした手がかりに頼り、男性の場合は建物や標識を中心とした手がかりに頼る傾向があることがわかっています。

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まとめ

・本レビューでは男性と女性の睡眠と記憶の違いについて説明しました。

・男性と女性では、脳の解剖学的な違い、それらの領域の活性化の違い、課題に対する問題回解決戦略の違いなどさまざまな違いがあることがわかっています。

・睡眠の質では、女性の方がホルモンの影響により不眠症になりやすく、特に月経前に強くなる傾向にあります。対策の1つとして、10分程度の昼寝も効果的であることがわかっています。

・記憶では、女性は単語や物語、人の名前などの記憶や言語の流暢さが優れており、男性は空間的認識が優れていることがわかっています。

参考文献

  1. Cahill L. Why sex matters for neuroscience. Nat Rev Neurosci. 2006;7:477–84.
  2. Mong JA, Cusmano DM, Mong JA. Sex differences in sleep : impact of biological sex and sex steroids. 2016;
  3. Goel N, Kim H, Lao RP. Gender differences in polysomnographic sleep in young healthy sleepers. Chronobiol Int. 2005;22:905–15.
  4. Voderholzer U, Al-Shajlawi A,Weske G, Feige B, Riemann D. Are there gender differences in objective and subjective sleepmeasures? A study of insomniacs and healthy controls. Depress Anxiety. 2003;17:162–72.
  5. Romans SE, Kreindler D, Einstein G, Laredo S, Petrovic MJ, Stanley J. Sleep quality and the menstrual cycle. Sleep Med. 2015;16:489–95.
  6. Suh S, Cho N, Zhang J. Sex differences in insomnia: from epide- miology and etiology to intervention. Curr Psychiatry Rep. Current Medicine Group LLC 1; 2018;20:1–12.
  7. Manber R. Sex, steroids, and sleep: a review. Sleep. 1999;22:540–55.
  8. Andreano JM, Cahill L. Sex influences on the neurobiology of learning and memory. Learn Mem. 2009;16:248–66.
  9. Mizuno K, Giese KP. Towards a molecular understanding of sex differences in memory formation. Trends Neurosci. Elsevier Current Trends. 2010;33:285–91.
  10. Postma A, Winkel J, Tuiten A, van Honk J. Sex differences and menstrual cycle effects i n human spatial memory. Psychoneuroendocrinology. 1999;24:175–92.
  11. Andreano JM, Cahill L. Sex influences on the neurobiology of learning and memory. Learn Mem. 2009;16:248–66.

投稿者

tsujimoto.kengo8762@gmail.com

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