医療従事者・研究者用ノート / 一般向けノート

モチベーションは自発的に高めにくい

人はモチベーションが高いときもあれば、低いときもあります。モチベーションが低いときに自らモチベーションを高めるようなこと(例えば、「自分はできる」などの言葉を言ってみるなど)をすることがあります。本日は、自発的にモチベーションに関与する領域の活動を高められるのかを調べた論文を紹介します。

タイトル:Cognitive Neurostimulation: Learning to Volitionally Sustain Ventral Tegmental Area Activation.

著者:Maclnnes J, Dickerson KC, Chen NK, Alison R.

雑誌:Neuron. 2016; 89(6) :1331-1342.

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0896627316000957

研究の背景

モチベーション(やる気)を高く保つことは学習や仕事の効率化などに重要である。そして、私たちは日常的に自分のモチベーションを高めるように試みているがその効果や脳活動の変化は不明の状態である。

モチベーションに関連する最も重要な領域は中脳辺縁系であることが知られている。

この中脳辺縁系は動機づけ、価値評価、不測の事態に対する行動、認知制御、行動の開始などさまざまな役割がある1,2,3,4)。そして、中脳辺縁系の主要領域が腹側被蓋野である。腹側被蓋野が活性化するとドーパミンが放出され、意欲的な行動を起こすことが明らかになっており、さまざまな研究で侵襲的な刺激や薬理学的な方法によって腹側被蓋野を活性化できることが明らかになっている5)

しかし、自発的にこの領域を活性化させ、モチベーションを高められるかは不明である。

そこで、本研究では、fMRIを用いて自発的にモチベーションを高める戦略を取ること(自分でモチベーションを高めるようとすること)で腹側被蓋野の活性化を高められるのかを調べた。

方法

・被験者は健常者73名(女性:44名、平均年齢:23歳)であった。

・被験者を自分でモチベーションを高める群、偽りのニューロフィードバックを与える群、腹側被蓋野を活性化させるニューロフィードバックを与える群、側坐核を活性化させるニューロフィードバックを与える群の4群に分けた。

・自分でモチベーションを高める群は「自分はできる」などの言葉を用いて自らのモチベーションを高めてもらうようにした。

・ニューロフィードバック群は図1のような画面を提示して腹側被蓋野または側坐核が活性化したらBarが上に動くようなフィードバックを与えた。

図1

結果

・図2は腹側被蓋野の活性化示している。

図2

腹側被蓋野を活性化させるニューロフィードバックを与えた群(オレンジ線)は腹側被蓋野の活性化が高まったのに対して、自分でモチベーションを高めようとした群(青線)の腹側被蓋野の活性化は低下した。(側坐核の結果は省きます。)

・また、腹側被蓋野を活性化させるニューロフィードバックを与えた群はその後、フィードバックモニターを見なくても自ら腹側被蓋野を活性化できることが可能になった。

まとめ

・本研究では、自発的に腹側被蓋野の活動を高め、モチベーションを高められるのかを検証した。

・結果は、自発的に腹側被蓋野の活動を高めることは困難であることがわかった。しかし、ニューロフィードバックなどで一度、腹側被蓋野の活動を高めることができればその後は自発的に活動を高められる可能性があることもわかった。

・これらの結果は将来的にモチベーションを高め、パフォーマンスと学習を改善するための介入ができる可能性を示している。

・(方法部分の説明や結果など多くの部分を省略しているのでご自身で原著論文を読むことをオススメします。)

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0896627316000957

参考文献

  1. Salamone JD, Correa M. The mysterious motivational functions of mesolimbic dopamine. Neuron. 2012; 76:470–485.
  2. Wimmer GE, Daw ND, Shohamy D. Generalization of value in reinforcement learning by humans. Eur. J. Neurosci. 2012; 35:1092–1104.
  3. Braver TS, Barch DM. A theory of cognitive control, aging cognition, and neuromodulation. Neurosci. Biobehav. Rev. 2002; 26:809–817.
  4. Stuber GD, Roitman MF, Phillips PEM, Carelli RM, and Wightman RM. Rapid dopamine signaling in the nucleus accumbens during contingent and noncontingent cocaine administration. Neuropsychopharmacology. 2005; 30:853–863.
  5. Salamone JD, Correa M. The mysterious motivational functions of mesolimbic dopamine. Neuron. 2012; 76:470–485.

投稿者

tsujimoto.kengo8762@gmail.com

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