医療従事者・研究者用ノート

脳卒中患者の運動機能の回復過程-ネットワーク解析-

損傷した運動領域の機能は病変部位周囲の非損傷領域にリマッピングされる可能性が実証されています。ヒトではfMRIなどを用いて研究されていますが、脳卒中後の長期的なネットワークレベルでのリマッピングを検証した研究はありません。本日は、ネットワーク解析の新しい方法であるグラフマッチング法を用いて回復期における機能的結合の再編成パターンを明らかにし、機能的結合の再編成パターンと運動機能回復過程間の相関を調べた研究を紹介します。

タイトル:Functional connectome reorganization relates to post-stroke motor recovery and structural disruption.

著者:Olafson ER, Jamison KW, Sweeney EM, et al.

雑誌:NeuroImage. 2021.

https://www.researchgate.net/publication/351965445_Functional_connectome_reorganization_relates_to_post-stroke_motor_recovery_and_structural_disconnection

背景

運動機能障害は脳卒中の中の最も一般的な症状である。運動機能はほとんどの患者で自然に回復するが1)、これは脳内ネットワークが機能的に再編成され、失われた機能を補う能力に大きく依存する2)。動物モデルでは、損傷した運動領域の機能は病変部位周囲の非損傷領域にリマッピングされる可能性が実証されている3)。また、病変部から離れた場所にある損傷部位と同様の機能や結合性を持つ領域も失われた機能を補うことがわかっている4,5)

しかし、ヒトではタスクfMRIや安静時fMRIを用いて研究されているが6)、脳卒中後の長期的なネットワークレベルの再編成を安静時fMRIで検証した研究はない。

そこで本研究では、初発の脳卒中患者を対象に安静時fMRIを縦断的に調べ、回復期における機能的結合の再編成パターンを明らかにすることを目的とした。

方法

・対象は初発の脳卒中患者23名(女性8名、平均年齢57歳)で、そのうち14名が右脳幹梗塞、9名が左脳幹梗塞であった(原著:Figure 1A)。

・安静時fMRIは発症後7日、14日、30日、90日、180日に撮像した。

・Fugl-Meyer運動スコアは各セッションで2回取得し、後に平均化して0-100の範囲で正規化した(原著:Figure 1B)。

・脳内ネットワークは機能的再編成の定量化を行った。脳全体の再編成の空間的パターンを評価するために、各領域の「リマップ頻度」を計算した。また、個人の機能再編成の程度を評価するために、時間経過と共にリマップされたノード数も算出した。

・統計処理として、脳梗塞の影響を受けた脳領域は、リマッピングの頻度が高いという仮説を証明するために、各領域のリマッピングの頻度と損傷の度合い(範囲)を定量化したサンプル平均のスコアとの相関を算出した。

・また、リマッピングが多い人は、運動能力が向上しているという仮説を検証するために、ある時点から次の時点(例えば、7日から14日)へのFugl-Meyer運動スコアの変化とリマッピングされた領域の数との間の相関を計算した。

結果

・脳卒中後1週間から6ヶ月の間に機能的な再編成が観察され、最も頻繁に機能的な再編成が起こっているのは小脳及び皮質下ネットワークであることがわかった。

・また、脳卒中によって構造的な結合が破綻された影響を受けた領域ほど時間の経過とともに機能的な再編成が起きていることがわかった。

・脳卒中後1週間の機能的再編成は入院時(初期評価時)の運動障害と6ヶ月後の運動回復の程度の両方に大きく関連し、さらに脳卒中後2週間から1か月の間の機能的再編成の程度は同じ亜急性期に評価された運動回復の程度と相関していることがわかった。

まとめ

・本研究は、脳卒中患者を対象に安静時fMRIを縦断的に調べ、回復期における機能的結合の再編成パターンと運動機能回復の程度を定量的に明らかにすることを目的とした。

・脳卒中後1週間から6ヶ月の間に機能的な再編成が観察され、運動回復の程度と相関していることがわかった。

・脳卒中後の運動機能の回復は、損傷領域の構造的・機能的な再構築によって影響を受ける。

・本研究で使用した解析(グラフマッチング法)は脳卒中の回復に関連した全脳の機能的結合の再編成を定量化できることが示唆された。

参考文献

  1. Duncan, P. W., Lai, S. M., & Keighley, J. (2000). Defining post-stroke recovery: Implications for design and interpretation of drug trials. Neuropharmacology, 39(5), 835–841.
  2. Rehme AK, Grefkes C. (2013). Cerebral network disorders after stroke: evidence from imaging-based connectivity analyses of active and resting brain states in humans. J Physio. 591(1). 17-31.
  3. Winship, I. R., & Murphy, T. H. (2009). Remapping the somatosensory cortex after stroke: Insight from imaging the synapse to network. Neuroscientist, 15(5), 507–524.
  4. Adam, R., Johnston, K., Menon, R. S., & Everling, S. (2020). Functional reorganization during the recovery of contralesional target selection deficits after prefrontal cortex lesions in macaque monkeys. Neuroimage, 207, 116339.
  5. Murata, Y., Higo, N., Hayashi, T., Nishimura, Y., Sugiyama, Y., Oishi, T., Tsukada, H., Isa, T., & Onoe, H. (2015). Temporal plasticity involved in recovery from manual dexterity deficit after motor cortex lesion in macaque monkeys. J. Neurosci., 35(1), 84–95.
  6. Park, C.-H., Chang, W. H., Ohn, S. H., Kim, S. T., Bang, O. Y., Pascual-Leone, A., & Kim, Y.-H. (2011). Longi- tudinal changes of resting-state functional connectivity during motor recovery after stroke. Stroke, 42(5), 1357–1362.

投稿者

tsujimoto.kengo8762@gmail.com

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