一般向けノート

両想いと片想いでは何が違うのか?

本日は、何が異性を魅力的に感じることと関連があるのかを明らかにするために初対面の男女をデートさせ、非言語的要素(視線や心拍数、皮膚の状態(緊張で汗をかいているかなど))を調べた研究を紹介します。

タイトル:The choreography of human attraction: Physiological synchrony in a blind date setting.

著者:Prochazkova E, Sjak-Shie E.E, Behrens F, Lindh D and Kret M.E.

雑誌:Nature human behavior. 2021.

両想いと片想いでは何が違うのか?

結論は、無意識の生理的反応である心拍数や手汗などの皮膚の状態がパートナーと同期することが魅力的に感じていることと関係していることが研究で明らかになっています。

つまり、両想いでは心拍数などが相手と同期している可能性が高く、片想いでは同期している可能性が低いということになります。

背景

SNSの発展により私たちは見知らぬ人と容易に出会うことが可能になっています。そのため、この10年間で現代のデートは急激に変化しています。世界で5000万人以上がSNSあるいは出会い系アプリで出会った人とデートをし、そのうち80%が真剣な交際を求めています1)。これらの出会いは交流や関係のあり方を形作る文化になりつつあります。

その結果、主に3つの特徴が起こっています。

第一に、初回のデータが初対面であること

第二に、初回デートまでがSNS上で出会ってから短期間であること

第三に、多くのパートナーを候補にできるため一人のパートナーを選ぶこと

では、短期間の交流で交際に発展するためには何が要因になるのでしょうか?

身体的特徴(かっこいい、かわいいなど)はパートナーを選択する上で重要な要素であることが明らかになっています2)。しかし、写真を見て相手を判断しても、その人が交流の後にどれだけ魅力的に評価されるかは予測できないことが明らかになっています3)。つまり、会う前に写真だけで魅力的と感じても、会った後に魅力的と感じるかはわからないことを意味しています。また、言葉による情報以外にも、視線や表情、身ぶりなどさまざまな非言語的な動きが影響を与えます。例えば、笑顔や笑い声は相手に対する魅力の度合いを反映し、その結果、相手は笑顔や笑い声を表現している人に惹かれることがわかっています4,5)

つまり、異性を魅力的に感じるかは言語的な要素と非言語的(表情や身振りなど)な要素から生まれることが示唆されています。

しかし、何が最も重要な要素なのかは明らかになっていません。

本研究では、何が異性を魅力的に感じることと関連があるのかを明らかにするために初対面の男女をデートさせ、非言語的要素(視線や心拍数、皮膚の状態(緊張で汗をかいているかなど))を調べました。

方法

・参加者は18-37歳の独身者138名(男女69名ずつ)で平均年齢は男性25歳、女性23歳でした。

・デート後に相手を10段階で評価し、さらに相手が自分をどれくらい好きになってくれたと思うか、相手の性格と自分の性格はどの程度似ているか、性的魅力を感じるかなどを質問しました。

・非言語的な測定として、視線の動きを測定できるEye-tracking system、心拍数、皮膚の状態を測定しました。

結果

・参加者の73%が出会い系アプリを使用しており、交際相手を探していた。

・調査後には138名中、58名(44%)が実験で会話した相手と今後もデートを希望(女性34%、男性53%)しており、その中から11組のカップルがマッチングしました(17%)。

・逆に20組がお互いに相性が合わないと感じ、半数のカップル(52%)は、片想いでした。つまり、半数は自分の予測(相手が自分のことを好んでくれていると予測すること)が間違っていることがわかりました。このデータは、人は実際には相手の恋愛感情をあまり正確に読み取ることができないことを意味しています。さらに参加者が相手に対してどれだけ好意を抱いているかと、相手が自分に対してどれだけ好意を抱いているかとの間に関連性はありませんでした。これらの結果は、人間は相手の意図した媚態を知覚する能力が低く、自分の気持ちと相手の気持ちを混ぜ合わせてしまう傾向があることがわかりました。

・視線や表情の結果、相手を非常に魅力的に感じると答えた参加者(男女)は、魅力的に感じないと答えた参加者に比べて視線や表情に差はないことがわかりました。つまり、異性の魅力は視線や表情で予測できないことがわかりました。

・心拍数や皮膚の状態の結果、心拍数は言語的相互作用において魅力を予測しました。皮膚の状態は言語的及び非言語的相互作用の両方において魅力を予測しました。つまり、心拍数や皮膚の状態など無意識のうちに制御しにくいパートナー間のシグナルの同期によって魅力が予測できることを意味しています。言い換えれば、視線や表情など意識的に制御できることは魅力を予測できないことを意味しています。

まとめ

・本研究は何が異性を魅力的に感じることと関連があるのかを調べました。

・最も魅力を予測できたのは心拍数や皮膚の状態(汗など)の無意識の生理的な同期でした。

・一方で視線や表情など意識的にコントロールできるものは魅力を予測できませんでした。つまり、相手が自分に対してずっと笑顔でずっと自分を見つめていても必ず自分に好意があると勘違いしてはいけないということになります。

・また、自分が相手のことを好きだから相手も自分のことを好きなど自分の気持ちと相手の気持ちを混ぜ合わせてしまうこと傾向があることがわかりました。

参考文献

  1. Mansoor Iqbal (2019) Tinder revenue and usage statistics (2018). Bus Apps. Available at: https://www.businessofapps.com/data/tinder-statistics/ [Accessed June 20, 2019].
  2. Walster E, Aronson V, Abrahams D, Rottman L (1966) Importance of physical attractiveness in dating behavior. J Pers Soc Psychol 4(5):508–516.
  3. Eastwick PW, Finkel EJ (2008) Sex differences in mate preferences revisited: Do people know what they initially desire in a romantic partner? J Pers Soc Psychol 94(2):245–264.
  4. Hall JA, Xing C (2015) The verbal and nonverbal correlates of the five flirting styles. J Nonverbal Behav 39(1):41–68.
  5. Moore MM (1985) Nonverbal courtship patterns in women. Context and consequences. Ethol Sociobiol 6(4):237–247.

投稿者

kengo.brain.science@gmail.com

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です