医療従事者・研究者用ノート

パーキンソン病に対する薬物療法はどの症状に効果があるのか?

パーキンソン病に対する薬物療法の中でコリンエステラーゼ阻害薬があります。本日は、コリンエステラーゼ阻害薬がパーキンソン病の歩行、バランス、転倒に効果があるのかを調べたmeta-analysis論文を紹介します。

タイトル:Cholinesterase inhibitors for gait , balance , and fall in Parkinson disease : a meta-analysis

著者:Chen JH, Hong CT

雑誌:npj Parkinson Disease. 2021:7:103

背景

パーキンソン病は2番目に多い神経変性疾患です。パーキンソン病の主な症状として、筋固縮、振戦、無動、歩行障害などがあります。パーキンソン病の薬物療法の1つにL-dopa(レボドパ)があります。しかし、歩行障害に対するレボドパはあまり効果がないことが明らかになっています1)

さらに、従来の深部脳刺激は、通常、歩行障害を改善せず、時には悪化させることも報告されています2)

また、パーキンソン病はいくつかのサブタイプに分かれますが、姿勢不安定・歩行障害のサブタイプは他のサブタイプと比べて急速に悪化することも明らかになっています3)

歩行障害も最も悲惨な結果は転倒であり、転倒することで骨折や外傷性脳損傷、歩行不安症を引き起こす可能性があります。そのため、歩行障害と転倒はパーキンソン病のQOL低下と死亡率増加につながります。

パーキンソン病の歩行障害の原因の1つとして、脳幹のコリン作動性ニューロン、脚橋被蓋核、背外側被蓋核内部の変性が提唱されています4)。コリンエステラーゼ阻害薬はアルツハイマー型認知症や血管性認知症などの認知症の治療に用いられています。パーキンソン病に対するコリンエステラーゼ阻害薬の効果については、多くの研究が行われていますが、その多くは認知機能や認知症に焦点が当てられています5-7)。いくつかの研究では8,9)、コリンエステラーゼ阻害薬が歩行やバランス、転倒への影響を調べ、効果を示した研究も存在しますが、ほとんどが小規模な臨床研究であり、効果の根拠は低いです。

そのため、本研究ではパーキンソン病の歩行障害、バランス、転倒に対するコリンエステラーゼ阻害薬の効果をまとめることを目的としました。

方法

・Pubmed、Embase、Web of Scienceの各データベースを用いて研究を検索した。

・主なアウトカムは歩行パラメータ、バランス、転倒に対する効果とした。

・全ての研究で、神経内科医より突発性パーキンソン病と診断された患者を対象とした。

結果

・検索の結果、本メタアナリシスでは、2010年から2020年間に発表された5つの無作為比較試験が対象となった。

・パーキンソン病に対するコリンエステラーゼ阻害薬は、歩行速度を有意に増加させなかった。

・しかし、単一課題中の歩幅やストライド長の変動が有意に減少した。

・転倒やバランスに関しては、コリンエステラーゼ阻害薬投与により転倒リスク軽減やバランス改善の傾向はあるものの有意ではない、有益な効果は認められた。

まとめ

・本研究は、パーキンソン病に対してコリンエステラーゼ阻害薬投与により、歩行、バランス、転倒に影響があるかを検証した。

・コリンエステラーゼ阻害薬は歩行速度の改善や転倒を減少させることができないことがわかったが、歩幅やストライド長のばらつきは有意に改善することがわかった。

参考文献

  1. Lim, S. Y., Fox, S. H. & Lang, A. E. Overview of the extranigral aspects of Parkinson disease. Arch. Neurol. 66, 167–172 (2009).
  2. Celiker, O., Demir, G., Kocaoglu, M., Altug, F. & Acar, F. Comparison of subthalamic nucleus vs. globus pallidus interna deep brain stimulation in terms of gait and balance; a two year follow-up study. Turk. Neurosurg. 29, 355–361 (2019).
  3. Jankovic, J. & Kapadia, A. S. Functional decline in Parkinson disease. Arch. Neurol. 58, 1611–1615 (2001).
  4. Morris, R. et al. Overview of the cholinergic contribution to gait, balance and falls in Parkinson’s disease. Parkinsonism Relat. Disord. 63,20–30 (2019).
  5. Ravina, B. et al. Donepezil for dementia in Parkinson’s disease: a randomised, double blind, placebo controlled, crossover study. J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry 76, 934–939 (2005).
  6. Dubois, B. et al. Donepezil in Parkinson’s disease dementia: a randomized, double-blind efficacy and safety study. Mov. Disord. 27, 1230–1238 (2012).
  7. Sawada, H. et al. Early use of donepezil against psychosis and cognitive decline in Parkinson’s disease: a randomised controlled trial for 2 years. J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry 89, 1332–1340 (2018).
  8. Koshy Cherian, A., Kucinski, A., Wu, R., de Jong, I. E. M. & Sarter, M. Co-treatment with rivastigmine and idalopirdine reduces the propensity for falls in a rat model of falls in Parkinson’s disease. Psychopharmacology 236, 1701–1715 (2019).
  9. Kucinski, A., de Jong, I. E. & Sarter, M. Reducing falls in Parkinson’s disease: interactions between donepezil and the 5-HT(6) receptor antagonist idalopirdine on falls in a rat model of impaired cognitive control of complex movements. Eur. J. Neurosci. 45, 217–231 (2017).

投稿者

tsujimoto.kengo8762@gmail.com

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です