一般向けノート

ビールとワインの組み合わせは二日酔いしやすいのか?

昔から世界中でビールやワインなど違う種類のお酒を一緒に飲むと二日酔いしやすいと言われてきました。ドイツではワインの前にビールを飲んだ方が二日酔いしにくいと言われています。

本日は、ビールとワインの組み合わせと飲む順番が二日酔いの程度に影響を与えるかを検証した論文を紹介します。

タイトル:Grape or grain but never the twain? A randomized controlled multiarm matched-Triplet crossover trial of beer and wine.

著者:Kochling J, Geis B, Wirth S and Hensel KO.

雑誌:American Journal of Clinical Nutrition. 2019:109(2):345-352.

背景

アルコールの過剰摂取は大きな健康リスクとなることが明らかになっています1)。アルコールによる二日酔いはあまり研究されていませんが、世界的に重大な問題であり、社会にとっても大きな負担となっています2)。特に、二日酔いに伴う症状は車の運転などの日常生活にリスクをもたらし3)、仕事での生産性の低下やパフォーマンスの低下(居眠りなど)、職場での欠勤や学業不振により社会経済的なコストが発生します4)

現在のところ二日酔いに対する有効な治療法も存在しません5)。そのため、世界中で「ちゃんぽん(ビールやワインなど違う種類のお酒を飲むこと)は悪酔いするからやめておけ」と昔から言われているようです。例えば、ドイツ人は「ワインの前にビールを飲めば気分が良くなり、ビールの前にワインを飲めば気分が悪くなる」といった言い伝えがあるようです。しかし、これらの言い伝えを裏付ける科学的根拠はありません。

そのため、昔から言われているこの知恵が二日酔いの負荷を軽減するかを調べるために、ビールとワインの飲む順番が翌日の二日酔いの重さに与える影響を検証しました。

方法

・被験者は健常者90名(年齢19-40歳(ドイツの研究であり、ドイツは16歳から飲酒可能)であった。

・90名は3つのグループに分けた。男女比、身長、体重、BMIなどの体格指標は全てのグループで同等であった。

・3つのグループのタイムスケジュールは図1に示す。二日酔いの重症度アンケートは翌日に実施した。

図1

・平均飲酒回数は月に数回で二日酔いの頻度は全てのグループで「ほとんど起こらない」から「月に数回起こる」であった。

結果

・3つのグループのいずれも飲酒の順番が異なるとアルコール重症度評価が有意に異なることはなかった。

・また、男女差や呼気アルコール濃度に差がある被験者間の結果では、女性の方が男性に比べてアルコール重症度評価が少し高かったが有意な結果ではなかった。

・何が二日酔いに影響する因子かを調べたところ、嘔吐の発生と酔いの自覚がアルコール重症度評価の上昇と関連していた。

まとめ

・本研究では、ビールとワインの飲む順番が翌日の二日酔いの重さに与える影響を検証しました。

・その結果、飲む順番で二日酔いに影響を与えることはないことがわかった。また、二日酔いは呼気アルコール濃度と関連していることから違う種類のお酒を飲むこと(ちゃんぽんすること)が影響するわけではなく、複数の種類を飲むことで飲酒する量やアルコール度数の高いお酒を飲むことが二日酔いになる原因であると示唆された。

参考文献

  1. Rehm J, Mathers C, Popova S, ThavorncharoensapM, Teerawattananon Y, Patra J. Global burden of disease and injury and economic cost attributable to alcohol use and alcohol-use disorders. Lancet 2009;373(9682):2223–33.
  2. Williams R, Alexander G, Armstrong I, Baker A, Bhala N, Camps- Walsh G, Cramp ME, de Lusignan S, Day N, Dhawan A, et al. Disease burden and costs from excess alcohol consumption, obesity, and viral hepatitis: Fourth report of the Lancet Standing Commission on Liver Disease in the UK. Lancet 2018;391(10125):1097–107.
  3. Gunn C, Mackus M, Griffin C, Munafo MR, Adams S. A systematic review of the next-day effects of heavy alcohol consumption on cognitive performance. Addiction 2018. doi:10.1111/add.14404.
  4. Frone MR. Prevalence and distribution of alcohol use and impairment in the workplace: A US national survey. J Stud Alcohol 2006;67(1): 147–56.
  5. Pittler MH, Verster JC, Ernst E. Interventions for preventing or treating alcohol hangover: Systematic review of randomised controlled trials. BMJ 2005;331(7531):1515–18.

投稿者

kengo.brain.science@gmail.com

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