医療従事者・研究者用ノート

子供の注意ネットワーク

成人では注意に関して背側注意経路と腹側注意経路がありますが、乳児ではこれらの経路が成人と同様に機能して注意に関与しているか明らかではありません。本日は、乳児が注意課題中に注意ネットワーク領域がどの程度活動するかを調べた研究を紹介します。

タイトル:Attention recruits frontal cortex in human infants.

著者:Ellis CT, Skalaban LJ, Yates TS, et al.

雑誌:PNAS. 2021:118(12):e20211474118.

https://www.pnas.org/content/118/12/e2021474118

背景

顕著な出来事に対して素早くその方向に注意を向けることは日常生活において重要である。このことは探索が重要である乳幼児期において最も顕著であると考えられている1)。乳児は生後すぐに眼球運動(サッカード)が可能で2)、手がかりを使用して方向性を決め3)、次の出来事に対して予測できることが明らかになっている4)。しかし、成人に比べてまだ未熟な乳児の脳がどのように注意機能を支えているかは明らかでない。

後部頭頂葉、前頭眼野、外側後頭葉は背側注意経路、側頭-頭頂接合部と中・下前頭回は腹側注意経路を構成し、トップダウン的注意およびボトムアップ的注意に関与している5-7)。また、前帯状皮質、島皮質、大脳基底核はサリエンシーネットワークを構成し、課題目標の維持・更新に関与している。しかし、ボトムアップ的注意では、予想外の刺激時にサリエンシーネットワークが活性化される8)。このことからボトムアップ的注意のために動員される領域は機能的に異なることが示唆されている。

成人でボトムアップ的注意に関連するこれらの領域は、乳児では解剖学的に未熟であるが9)、これらの領域は生後1年で急速に発達し10,11)、トップダウン的注意にも関与している12,13)。しかし、乳児期においては、トップダウン的注意はボトムアップ的注意に比べて発達しておらず14)、乳児期の注意ネットワークの一部に未熟な部分があることが示唆されている。これらの証拠から他の領域が注意に関与しているという説15)や解剖学的に未熟であっても前頭葉と頭頂葉間のネットワークは乳児期でも機能することが可能という説がある16,17)

これらをまとめると幼児を対象とした脳波研究では、注意18)やエラーに対する処理19)の神経シグナルは成人並みであるが、成人と同様に注意ネットワーク(背側および腹側)をどの程度利用しているかは明らかでない。

本研究では、乳児が注意課題中に注意ネットワーク領域がどの程度活動するかを調べた。

方法

・被験者は生後3ヶ月から12ヶ月の乳児20名。

・課題は刺激駆動型注意課題とした。

・課題は固視点が出現後、ターゲットと同側(50%)、ターゲットと対側(25%)、両方(25%)に先行刺激(手がかり刺激)が出現する。その後、ターゲットが出現する課題である。

・また課題中にMRIを撮像した。

・(詳しい方法や解析は原著を確認ください。)

結果

・課題中の反応時間は、ターゲットと同側に先行刺激が出現する条件では、両方に出現する条件よりも短く、ターゲットと対側に先行刺激が出現する条件では、両方に出現する条件よりも長かった。

・課題中の注意ネットワークの脳活動は、ターゲットと対側に先行刺激が出現する条件の方が同側に出現する条件よりも強く活動し、特に前頭葉領域(右前帯状皮質と右中前頭回)の活動が顕著であった。

まとめ

・本研究は乳児を対象に注意課題中に注意ネットワーク(の領域)がどの程度活動するかを調べた。

・ターゲットと対側に先行刺激が出現する条件(違う位置にターゲットが出現する条件)で前頭葉領域に強い活動が認められた。

・この結果は、これらの領域が発達の初期に既に機能して、注意の方向付けを補っている可能性を示唆している。また、乳児の脳がどのように注意の分配を制御しているのかを理解するための一助となる。

参考文献

  1. E. J. Gibson, Exploratory behavior in the development of perceiving, acting, and the acquiring of knowledge. Annu. Rev. Psychol. 39, 1–42 (1988).
  2. R. N. Aslin, P. Salapatek, Saccadic localization of visual targets by the very young human infant. Atten. Percept. Psychophys. 17, 293–302 (1975).
  3. T. Farroni, S. Massaccesi, D. Pividori, M. H. Johnson, Gaze following in newborns. Infancy 5, 39–60 (2004).
  4. L. L. Emberson, J. E. Richards, R. N. Aslin, Top-down modulation in the infant brain: Learning-induced expectations rapidly affect the sensory cortex at 6 months. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 112, 9585–9590 (2015).
  5. M. Corbetta, G. L. Shulman, Control of goal-directed and stimulus-driven attention in the brain. Nat. Rev. Neurosci. 3, 201–215 (2002).
  6. F. Doricchi, E. Macci, M. Silvetti, E. Macaluso, Neural correlates of the spatial and expectancy components of endogenous and stimulus-driven orienting of attention in the Posner task. Cerebr. Cortex 20, 1574–1585 (2010).
  7. M. Corbetta, G. Patel, G. L. Shulman, The reorienting system of the human brain: From environment to theory of mind. Neuron 58, 306–324 (2008).
  8. G. L. Shulman et al., Interaction of stimulus-driven reorienting and expectation in ventral and dorsal frontoparietal and basal ganglia-cortical networks. J. Neurosci. 29, 4392–4407 (2009).
  9. B. Casey, N. Tottenham, C. Liston, S. Durston, Imaging the developing brain: What have we learned about cognitive development? Trends Cognit. Sci. 9, 104–110 (2005).
  10. S. Alcauter, W. Lin, J. K. Smith, J. H. Gilmore, W. Gao, Consistent anterior–posterior segregation of the insula during the first 2 years of life. Cerebr. Cortex 25, 1176–1187 (2015).
  11. M. Eyre et al., The developing human connectome project: Typical and disrupted functional connectivity across the perinatal period. bioRxiv [Preprint] (2020). 
  12. J. M. Kincade, R. A. Abrams, S. V. Astafiev, G. L. Shulman, M. Corbetta, An event-related functional magnetic resonance imaging study of voluntary and stimulus- driven orienting of attention. J. Neurosci. 25, 4593–4604 (2005).
  13. K. N. Meyer, F. Du, E. Parks, J. B. Hopfinger, Exogenous vs. endogenous attention: Shifting the balance of fronto-parietal activity. Neuropsychologia 111, 307–316 (2018).
  14. G. Csibra, L. A. Tucker, M. H. Johnson, Neural correlates of saccade planning in infants: A high-density ERP study. Int. J. Psychophysiol. 29, 201–215 (1998).
  15. M. I. Posner, M. K. Rothbart, B. E. Sheese, P. Voelker, Control networks and neuromodulators of early development. Dev. Psychol. 48, 827 (2012).
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  17. G. Dehaene-Lambertz, E. S. Spelke, The infancy of the human brain. Neuron 88, 93– 109 (2015).
  18. W. Xie, B. M. Mallin, J. E. Richards, Development of infant sustained attention and its relation to EEG oscillations: An EEG and cortical source analysis study. Dev. Sci. 21, e12562 (2018).
  19. A.Conejero, S. Guerra, A. Abundis-Guti errez, M. R. Rueda, Frontal theta activation associated with error detection in toddlers: Influence of familial socioeconomic status. Dev. Sci. 21, e12494 (2018).

投稿者

tsujimoto.kengo8762@gmail.com

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