医療従事者・研究者用ノート

慢性疼痛の強さと変化に関連する脳領域

本日は慢性腰痛患者と慢性偏頭痛患者の痛みの強さと変化はどの脳領域でコード化されているかを調べた研究を紹介します。

タイトル:Patients with chronic pain exhibit individually unique cortical signatures of pain encoding.

著者:Mayr A, Jahn P, Stankewitz A, et al.

雑誌:Hum Brain Mapp. 2021:1-18.

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/hbm.25750

背景

痛みの知覚は主観的かつ経験に基づき、個人の生理学的および心理的状態に影響を受ける1)。慢性疼痛は、侵害受容ニューロンの過感作2)、侵害受容システムの内因性抑制の減少3)が報告されているが、神経機構は十分に理解されていない。

先行研究では、亜急性腰痛から慢性腰痛への移行では、扁桃体、内側前頭前野、側坐核が重要であり4,5)、慢性偏頭痛では、視床下部の後部が重要であると報告している6)。また、急性疼痛では、一次および二次体性感覚野、島皮質、帯状皮質、小脳、視床がコード化に関与することが既に知られており、慢性疼痛はこれらの領域の活動が増加することも知られている7,8,9)

しかし、これらの研究では慢性疼痛の特徴である継続的かつ時間的に疼痛の強度が変動することを捉えられていない。つまり、時間とともに変動し、疼痛強度の増加、減少の期間を考慮する必要がある。

そのため、本研究では、疼痛の変動と疼痛の強度が脳のどの部位でコード化されているかを調べた。

方法

・被験者は慢性腰痛患者20名(女性16名、平均年齢44±13歳)と慢性偏頭痛患者20名(女性18名、平均年齢34±13歳)であった。

・機能的MRIの撮像を繰り返し行い、内因性疼痛の強さを定期的に評価した。

・線形混合効果モデル(複数の条件で反復測定したデータに対して条件による平均の差を検定するときに用いる統計手法)を用いて、痛みの強さと変化に関連する皮質領域を分離した。

結果

・慢性腰痛患者の痛みの強さは前部島皮質、下前頭回弁蓋部、橋でコード化されていることがわかった。

・慢性腰痛患者と慢性偏頭痛患者の痛みの変化は主に前部島皮質でコード化されていることがわかった。

・また、個々で上記の領域の活動に違いがあり、それぞれの患者で内因性疼痛のコード化に違いがあることが示唆された。

まとめ

・本研究は、慢性腰痛患者と慢性偏頭痛患者の痛みの強さと変化に関連する領域を特定することを目的とした。

・痛みの強さは主に前部島皮質、下前頭回弁蓋部、橋でコード化され、痛みの変化は主に前部島皮質でコード化されていることがわかった。

・しかし、脳部位の活動は個々の患者で違いがあり、慢性疼痛は複雑で多面的な疾患であることを理解する上で重要な知見である。

参考文献

  1. Moriarty, O., McGuire, B. E., & Finn, D. P. (2011). The effect of pain on cognitive function: A review of clinical and preclinical research. Progress in Neurobiology, 93, 385–404.
  2. Gold, M. S., & Gebhart, G. F. (2010). Nociceptor sensitization in pain pathogenesis. Nature Medicine, 16, 1248–1257.
  3. Edwards, R. R. (2005). Individual differences in endogenous pain modulation as a risk factor for chronic pain. Neurology, 65, 437–443.
  4. Hashmi, J. A., Baliki, M. N., Huang, L., Baria, A. T., Torbey, S., Hermann, K. M., … Apkarian, A. V. (2013). Shape shifting pain: Chronification of back pain shifts brain representation from nociceptive to emotional circuits. Brain, 136, 2751–2768.
  5. Makary, M. M., Polosecki, P., Cecchi, G. A., DeAraujo, I. E., Barron, D. S., Constable, T. R., … Geha, P. (2020). Loss of nucleus accumbens low-frequency fluctuations is a signature of chronic pain. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 117, 10015–10023.
  6. Schulte, L. H., Allers, A., & May, A. (2017). Hypothalamus as a mediator of chronic migraine: Evidence from high-resolution fMRI. Neurology, 88, 2011–2016.
  7. Baliki, M. N., Chialvo, D. R., Geha, P. Y., Levy, R. M., Harden, R. N., Parrish, T. B., & Apkarian, A. V. (2006). Chronic pain and the emotional brain: Specific brain activity associated with spontaneous fluctuations of intensity of chronic back pain. The Journal of Neuroscience, 26, 12165–12173.
  8. Price, D. D. (2000). Psychological and neural mechanisms of the affective dimension of pain. Science, 288, 1769–1772.
  9. Filippi, M., & Messina, R. (2020). The chronic migraine brain: What have we learned from neuroimaging? Frontiers in Neurology, 10, 1356.

投稿者

tsujimoto.kengo8762@gmail.com

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