医療従事者・研究者用ノート

What経路の2つの機能

本日はWhat経路の領域が行動認識と物体認識の2つの役割があることを提唱している論文を紹介します。

タイトル:Two ‘what’ pathways for action and object recognition.

著者:Wurm MF, Caramazza A

雑誌:Trends in cognitive science. 2022:26(2):103-116.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34702661/

背景

What経路は物体を認識するための経路(例えば、はさみ、顔、東京タワーなど)として一般的に知られている1,2)。この経路は、知覚から一般的な概念への変換を行い、生物と無生物や顔、体の一部、道具、場所などのより具体的な物体カテゴリーの変換に特化している3,4)

しかし、私たちは物体が何であるかを認識するだけでなく、物体が関与しうる行動(それが何をしているのか:例えば、走る、切る、挨拶するなど)も認識している。行動を認識するということは、他者の計画や欲求を推測し、反応し、社会的学習を行うための基礎となり、行動を導く上での重要な役割を担っている。そのため、行動認識に特化した神経回路が発達している可能性は十分に考えられる。

ここでは以下の疑問に対して議論していく。

・脳のどの部位が行動認識のためにどのような経路を形成しているのか?

・行動認識は通常では、物体認識の上に成り立っており、行動は物体の特性(人か物か)によって異なるため、物体(体の一部、道具、果物)と行動(走る、切る、食べる)の神経表現はどのように関連しているのか?

行動認識のための経路

行動認識は、外側後頭側頭皮質(lateral occipitotemporal cortex)と外側前頭葉および頭頂葉領域からなるネットワークで構成されている5,6)。行動(例えば、リンゴを切る)の認識には、物体(リンゴ、ナイフ、手)の視覚的分析が含まれる。

そのため、外側後頭側頭皮質は身体の部位や物体、その動きなどの知覚的行動の詳細を処理し、より高度な概念の行動はさらに前方の頭頂葉皮質に符号化される。

物体と行動の表現

近年のニューロイメージング研究により、外側後頭側頭皮質と下頭頂小葉に行動表現があることが明らかになってきた7,8,9,10)。これらの領域における行動表現は、例えば、瓶、箱、ドア、ドア箱といった対象物やこれらの異なる対象物を操作するために必要な身体部位やその動きが異なる知覚的なバリエーションに対して一般化される。

外側後頭側頭皮質と腹側後頭側頭皮質(Ventral occipitotemporal cortex)には、物体(身体の一部、顔、道具など)のカテゴリーに優先的に反応する領域と生物と無生物に大別する領域が存在し、物体認識と記憶に焦点を当てて議論され、腹側視覚系(What経路)に属すると考えられている11)。これら2つの領域は、例えば、道具や動物の動きとその形状など、動きと形状に関連する物体の異なる側面をそれぞれ処理している11,12)

しかし、ここでは、外側後頭側頭皮質が運動以外の情報を表現していることを提唱する。外側後頭側頭皮質の動作表現は異なる動作にまたがって一般化し、物や人などの異なるターゲットの同じ動作を識別することができる。さらに、物体の形に対する感度も示し13,14)、運動を意味しない無意味な表現に対しても同様に識別している15,16)。また、外側後頭側頭皮質の前方部は、運動以外の精神的な動作を示す動詞に対しても身体的な動詞と同程度の活動を示す17)。外側後頭側頭皮質の物体表現は物体認識に従属するのではなく、行為認識の前段階、つまり、行為の主体、道具、受けてとして機能する。

一方で、物体表現は主に腹側経路の腹側後頭側頭皮質に依存する。腹側後頭側頭皮質は、対象が何であるかを認識するために、特定の対象/特徴を認識している。

一方で運動前野のような前頭葉領域は、概念的だけでなく、関与する身体部位や身体運動の観点からも異なる行動の認識の識別がなされており、前頭葉の表現が運動に関するものであることが示唆されている18)

まとめ

・外側後頭側頭皮質が行動認識において、中心的な役割を果たすことを示唆している。

・腹側後頭側頭皮質と外側後頭側頭皮質は、それぞれ「対象を認識する」ことと、「対象が何をするか」という認識の異なる側面に特化していることを提唱している。

・しかし、行動および物体の認識時の外側後頭側頭皮質と前頭葉領域の相互作用(例えば、前頭葉領域の行動認識における役割や物体認識にどの程度関与しているかなど)や左右外側後頭側頭皮質の半球間の相互作用についてはまだ明らかでないことがあることから更なる研究が必要となってくる。

参考文献

  1. Ungerleider, L.G. and Mishkin, M. (1982) Two cortical visual systems. In Analysis of Visual Behavior (Ingle, D.J. et al., eds), MIT Press
  2. Goodale, M.A. and Milner, A.D. (1992) Separate visual path- ways for perception and action. Trends Neurosci. 15, 20–25
  3. Konkle, T. and Caramazza, A. (2013) Tripartite organization of the ventral stream by animacy and object size. J. Neurosci. 33, 10235–10242
  4. Chao, L.L. et al. (1999) Attribute-based neural substrates in temporal cortex for perceiving and knowing about objects. Nat. Neurosci. 2, 913–919
  5. Oosterhof, N.N. et al. (2013) Crossmodal and action-specific: neuroimaging the human mirror neuron system. Trends Cogn. Sci. 17, 311–318
  6. Orban, G.A. et al. (2021) From Observed Action Identity to Social Affordances. Trends Cogn. Sci. 25, 493–505
  7. Vannuscorps, G. et al. (2019) Large-scale organization of the hand action observation network in individuals born without hands. Cereb. Cortex 29, 3434–3444
  8. Wurm, M.F. et al. (2016) Decoding concrete and abstract action representations during explicit and implicit conceptual processing. Cereb. Cortex 26, 3390–3401
  9. Wurm, M.F. et al. (2017) Action categories in lateral occipitotemporal cortex are organized along sociality and transitivity. J. Neurosci. 37, 562–575
  10. Wurm, M.F. and Lingnau, A. (2015) Decoding actions at different levels of abstraction. J. Neurosci. 35, 7727–7735
  11. Martin, A. (2016) GRAPES-Grounding representations in action, perception, and emotion systems: How object proper- ties and categories are represented in the human brain. Psychon. Bull. Rev. 23, 979–990
  12. Chatterjee, A. (2010) Disembodying cognition. Lang. Cogn. 2, 79–116
  13. Proklova, D. et al. (2016) Disentangling representations of object shape and object category in human visual cortex: the animate- inanimate distinction. J. Cogn. Neurosci. 28, 680–692
  14. Wang, X. et al. (2018) Disentangling representations of shape and action components in the tool network. Neuropsychologia 117, 199–210
  15. Cant, J.S. et al. (2009) fMR-adaptation reveals separate processing regions for the perception of form and texture in the human ventral stream. Exp. Brain Res. 192, 391–405
  16. Cant, J.S. and Goodale, M.A. (2007) Attention to form or surface properties modulates different regions of human occipitotemporal cortex. Cereb. Cortex 17, 713–731
  17. Bedny, M. et al. (2008) Concepts are more than percepts: the case of action verbs. J. Neurosci. 28, 11347–11353
  18. Hafri, A. et al. (2017) Neural representations of observed actions generalize across static and dynamic visual input. J. Neurosci. 37, 3056–3071

投稿者

tsujimoto.kengo8762@gmail.com

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