医療従事者・研究者用ノート

報酬と注意

本日は、報酬価値がどのように自発的な注意に影響を及ぼすかを調べた研究を紹介します。

タイトル:Reward-driven modulation of spatial attention in the human frontal eye-field.

著者:Bourgeois A, Sterpenich V, Iannotti GR and Vuilleumier P

雑誌:NeuroImage. 2021:247:118846.

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1053811921011174?dgcid=rss_sd_all

背景

トップダウン的注意は関連する感覚信号を優先し、無関係な情報を無視することによって回避行動を制御している。頭頂間溝領域の頭頂葉と前頭眼野領域の前頭葉は背側注意経路を構成し、選択的注意に関与している1)。一方で、側頭-頭頂接合部と右中および下前頭回

は腹側注意経路を構成し、顕著な刺激や予期しない刺激の検出に関与している2,3)

最近では、感情や動機づけの価値も行動を起こすためのトリガーとなり、注意の選択に影響を与えることが明らかになってきている4,5)。脅威や報酬下では、前頭眼野を含む前頭前野の選択的な活動が関与している可能性が示唆されている6)。また、サルを用いた研究では、報酬価値に関連した潜時が注意の潜時と類似していることが実証されている7)。これらの研究(原著のIntroductionには他の先行研究の知見も紹介されています)は、選択的注意を制御する神経メカニズムと報酬情報の評価を担う神経メカニズムとの間に密接な関係があることを強調している。

しかし、多くの実験デザインではこの2つのメカニズムを明確に区別することは難しい8)。そのため、価値主導型、目標主導型、刺激主導型の3つのメカニズムの組み合わせが注意の選択競争においてどのような脳領域や回路が関与しているのかは明らかでない。

そのため、本研究では報酬価値がどのように自発的な注意に影響を及ぼすのか、その神経メカニズムを検討した。

方法

・被験者は、23名の健常者(女性12名、平均年齢26歳)であった。

・課題は視覚的探索課題で、MRI外で実施する初期学習/連合フェーズとMRI撮像中に実施するテストフェーズから構成されている(詳しくは原著の図1を参照)。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1053811921011174?dgcid=rss_sd_all

・MRIは3T MRI scannerを用いた。

結果

・前頭眼野は報酬価値に対する注意の移動時に選択的に活動が変調された。この活動の変調は特に不一致刺激時の予測キュー後に大きかった。

まとめ

・本研究は、報酬価値がどのように自発的な注意に影響を及ぼすのか、その神経メカニズムを検討した。

・前頭眼野は、内発的に注意を向ける際の目標指向的な注意の移動と報酬に関連した刺激の影響の両方に重要な役割があることが明らかになった。

・前頭眼野が、空間的なマップの生成と選択的注意の誘導のために異なるトップダウン的バイアスの源を統合する脳内回路の中心的役割を果たしている可能性がある。

参考文献

  1. Corbetta, M. , Shulman, G.L. , 2002. Control of goal-directed and stimulus-driven attention in the brain. Nat. Rev. Neurosci. 3 (3), 201–215 .
  2. Corbetta, M. , Kincade, J.M. , Ollinger, J.M. , McAvoy, M.P. , Shulman, G.L. , 2000. Voluntary orienting is dissociated from target detection in human posterior parietal cortex. Nat. Neurosci. 3 (3), 292–297 .
  3. Bourgeois, A., Chica, A.B., Valero-Cabre, A., Bartolomeo, P., 2013a. Cortical control of inhibition of return: causal evidence for task-dependent modulations by dorsal and ventral parietal regions. Cortex 49 (8), 2229–2238.
  4. Bourgeois, A., Chelazzi, L., Vuilleumier, P., 2016a. How motivation and re- ward learning modulate selective attention. Prog. Brain Res. 229, 325–342.
  5. Bourgeois, A., Saj, A., Vuilleumier, P., 2018b. Value-driven attentional capture in neglect. Cortex 109, 260–271.
  6. Kim, A.J., Anderson, B.A., 2020b. Threat reduces value-driven but not salience-driven attentional capture. Emotion 20 (5), 874–889. 
  7. Stanisor, L., van der Togt, C., Pennartz, C.M., Roelfsema, P.R., 2013. A unified selection signal for attention and reward in primary visual cortex. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 110 (22), 9136–9141.
  8. Maunsell, J.H., 2004. Neuronal representations of cognitive state: reward or attention? Trends Cogn. Sci. 8 (6), 261–265.

投稿者

tsujimoto.kengo8762@gmail.com

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