医療従事者・研究者用ノート

大脳基底核の運動制御

本日は大脳基底核内の淡蒼球外節から線条体のみに投射するArkypallidalニューロンについて紹介している論文を紹介します。

タイトル:Motor Control: A Basal Ganglia Feedback Circuit for Action Suppression.

著者:Bevan MD.

雑誌:Current Biology. 2021:31(4):R191-R193.

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0960982220317802

大脳基底核は、人間の行動や思考の選択、実行、終了、抑制に重要な役割を果たす皮質下領域である。このような重要な機能を持つ大脳基底核の調節障害や変性は、パーキンソン病、ハンチントン病、強迫性障害、依存症などの障害に関与している。

1980年代に提唱された有力な大脳基底核モデルによれば、GABA作動性出力ニューロンを直接抑制する線条体投射ニューロン(直接経路)が、下流の中脳、脳幹、視床回路を抑制しないことで運動を促進し、活性化させる1,2)

一方で、GABA作動性の線条体投射ニューロン(間接経路)は、淡蒼球外節およびグルタミン酸作動性の視床下核を介して基底核出力ニューロンへ間接的に投射し、基底核出力の抑制を増加させることで運動を抑制する1,2,3)

しかし、その後の研究によりこれらのメカニズムはさらに複雑であることがわかってきた。例えば、淡蒼球外節ニューロンの一部は、大脳基底核の出力ニューロンには投射しない。下流の視床下核や基底核の出力核には作用せず、線条体のみ支配し、線条体投射ニューロンや介在ニューロンの活動を抑制している4,5)

このような淡蒼球外節から線条体のみに投射するarkypallidalニューロンは、行動の実行に必要な線条体の処理を停止させたりする。しかし、arkypallidalニューロンの活動がどのように制御されているかはこれまでわかっていなかった。

Aristietaらは6)、間接経路の線条体投射ニューロンがarkypallidalニューロンからの影響によっても運動を制御しているのかを調べるために、間接経路の線条体投射ニューロン、arkypallidalニューロンおよび視床下核ニューロンを光遺伝子学的手法を用いてトレッドミル上で運動するマウスへの影響を比較検討した。

その結果、間接経路の線条体投射ニューロンへの刺激によって運動量を低下させることがわかった。一方で視床下核ニューロンへの刺激では明確な影響を示さなかった。

したがって、間接経路の線条体投射ニューロンは間接的ではあるが、arkypallidalニューロンへの作用を通じて行動(運動)も制御していることが明らかとなった。

しかし、最終的に大脳基底核のエンコーディングを解明するためには、複数のニューロンタイプの測定とニューロン活動および行動データからの解析を同時に行う必要がある。

まとめ

大脳基底核は、人間が行う行動の促進・抑制を通じて、行動を制御している。新たな研究6)により、線条体と淡蒼球を結ぶ大脳基底核フィードバック回路が、マウスの運動量を抑制することが明らかになった。

参考文献

  1. Albin, R.L., Young, A.B., and Penney, J.B. (1989). The functional anatomy of basal ganglia disorders. Trends Neurosci. 12, 366–375.
  2. Kravitz, A.V., Freeze, B.S., Parker, P.R., Kay, K., Thwin, M.T., Deisseroth, K., and Kreitzer, A.C. (2010). Regulation of parkinsonian motor behaviours by optogenetic control of basal ganglia circuitry. Nature 466, 622–626.
  3. Smith, Y., Bevan, M.D., Shink, E., and Bolam, J.P. (1998). Microcircuitry of the direct and indirect pathways of the basal ganglia. Neuroscience 86, 353–387.
  4. Mallet, N., Micklem, B.R., Henny, P., Brown, M.T., Williams, C., Bolam, J.P., Nakamura, K.C., and Magill, P.J. (2012). Dichotomous organization of the external globus pallidus. Neuron 74, 1075–1086.
  5. Glajch, K.E., Kelver, D.A., Hegeman, D.J., Cui, Q., Xenias, H.S., Augustine, E.C., Hernandez, V.M., Verma, N., Huang, T.Y., Luo, M., et al. (2016). Npas1+ pallidal neurons target striatal projectionneurons. J. Neurosci. 36, 5472–5488.
  6. Aristieta, A., Barresi, M., Lindi, S.A., Barrie` re, G., Courtand, G., de la Crompe, B., Guilhemsang, L., Gauthier, S., Fioramonti, S., Baufreton, J., and Mallet, N.P. (2021). A disynaptic circuit in the globus pallidus controls locomotion inhibition. Curr. Biol. 31, 707–721.

投稿者

tsujimoto.kengo8762@gmail.com

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